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第14話 刺客 ④
「ユベール様は何も悪くありません。悪いのはユベール様を守れなかった、私 たちです」
ヒューゴ様達が悪いはずはない。僕は首を振った。
「いいえ、私たちのせいなんです」
クロエが用意してくれたハーブティを、ヒューゴ様が手渡してくれる。
もう安全なはずなのに震えが止まらず、ソーサーとカップが擦れる音がし、ハーブティの水面が揺れる。
「このハーブティは気持ちを落ち着かせてくれます。これを飲まれてから、湯船につかってください。入浴中は、私が外で護衛しますので、どうぞ安心していてください」
僕は働かない頭で何度も頷き、言われるがままお茶を飲んだ。
返り血を流すために、湯船はすぐに赤く染まり入浴は長かった。
クロエが綺麗に洗ってくれるのを、僕はただじっと見ていることしかできなかった。
何事もなかったかのように、返り血でドロドロになっていた髪や体は綺麗に洗われていく。
それでも自分の体から放たれていた鉄のような、あの血なまぐさい臭いが、鼻の奥にの凝っている。
あれが夢であればいいのに……。
そう思うが、鏡に映った自分の首に、先ほど短剣を突きつけられ流血した箇所が、手当てされていた。
どんなに思いたくなくても、あれは現実で夢ではない。
クロエに手を引かれるまま、ベッドの中に入ったが、目を瞑れば先ほどの惨状が瞼の裏に映し出される。
結局、僕は一睡もできないまま、朝を迎えた。
僕がここで生きていく方法。ここでは息を殺し、死んだように生きていくことが、僕の生きる道。孤児院を守る方法だち、僕は肝に銘じた。
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