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第31話 孤児院への慈善事業 ①

 殿下との約束を守らず園庭にでてから3日経った。  すぐにでも処罰がくだるかと思ってきたのに、まだ何もお達しがない。  あの後クロエは、僕に何度も何度も謝ってくれたけれど、クロエは悪くない。  ヒューゴ様は、なんとか処罰がくだらないようにしてくださっているみたいで、また手を煩わせてしまって本当に申し訳ない。  クロエもヒューゴ様も、もちろん殿下も悪くない。  外に出ると決めたのは僕。殿下と約束を守らなかったのも僕。誰も悪くない。  だから厳しい処罰をがくだっても、僕は従うと決めている。  そう覚悟を決め部屋で大人しくしていると、 ートントンー  ドアをノックする音がした。 「はい」  返事をすると、 「ヒューゴです。殿下から御達しがありました。クロエと共に、外出する準備をしてから玄関前に用意している馬車までお越しください」  廊下からヒューゴ様の声がした。  とうとう処罰を受ける、その時がきた。  胃の中に重たい鉛のような物が生まれ、ずっしりと重くキリキリと痛む。  今まで部屋から出てはいけないときつく言われていたのに、今度は部屋の外どころか宮殿の外に連れて行かれる。  誰も寄り付かなさそうな場所に連れて行かれる?  そこで何をするの? 何が行われるの?  どこに連れて行かれるか、何がはじまるのか不安で仕方ない。 「宮殿の外で、何をするのですか?」  恐る恐る廊下にいるヒューゴ様に聞く。 「詳しいお話は、馬車の中で……」  どうして今教えてくれないのか、人前では教えられなほど恐ろしいことなのか……。  さらに不安が募る。でもここでいくら聞いてもおしえてはもらえなさそう。 「わかりました。すぐに向かいます」  不安な気持ちを両手の拳の中に握り締め、そう返事をした。    言われた通り、外出する準備をする。  短い間だったけれど、僕の寝床を作ってくれた部屋を見回した。  もう二度とここには帰ってこられないかもしれない。  部屋の中央にあるテーブルには、今日は久しぶりに、あの青い花が飾られている。  もし僕に時間があったのなら、この青い花を押し花にして持っていきたかったけれど、できなかったな……。  そっと青い花に触れた。  ここでの生活は短かったし怖いことも多かっったけれど、孤児院の子どもたちの生活が少しの間だけでもよくなる手伝いができたのなら、僕が|宮殿《ここ》で過ごした時間は無駄ではなかったのかな……?  これから何が待っているかわからないけれど、僕は僕ができることを一生懸命するだけ。 「よし!」  気を抜けばこれからの不安で押しつぶされそうになる気持ちを奮い立たせ、 「さぁ、行こう」  クロエの手を握り、部屋を出た。  宮殿の玄関には馬車が用意され乗り込むと、すでにヒューゴ様が乗っていた。 「あの……それで、今からどこへ?」 「実は今回の処罰は、とある孤児院での慈善事業だとしか、私も聞かされていないので、行先はよく分かってないのです」  今回の処罰が慈善事業?  どこか|辺鄙《へんぴ》なところに追いやられたり、軽くても重労働をさせられるかと思っていた。  だから処罰が慈善事業という軽いもので、ヒューゴ様も詳しく内容を聞かされていないなんてことがあるんだと驚いた。  それに一つ引っかかることがある。 「あの、処罰を受けるのは僕だけですよね?」 「いえ、今回の処罰はユベール様とクロエと私の3人で受けるように言われています」 「え? そうなんですか?」 「はい。ユベール様をそそのかしたのは私とクロエで、罪は重いと言われました」  ヒューゴ様は苦笑する。  園庭で殿下に問い詰められた時は、もう後戻りできないほどの過ちをしてしまったのかもしれないと思っていたけれど、ヒューゴ様の話し方では、もしかすると殿下は今回のこと、あまりお怒りじゃないのかもしれない。  そう思うと、少しホッとした。 「ご迷惑をおかけしてしまい、すみません」  謝ると、 「私はこうしてユベール様と出掛けることができて、むしろお礼を言いたいほどです」 「本当です。私もユベール様とのお出かけ、ワクワクします」  ヒューゴ様もクロエも笑顔で返してくれる。  胃の中に重く居座っていた鉛のような物が、ヒューゴ様とクロエの笑顔で消えていく。 「ユベール様がとお出かけができて、むしろ私にとっては今回の処罰は、ご褒美みたいなものですよ」  クロエがそういってくれて、ヒューゴ様とクロエを巻き込んでしまった申し訳なさが消えていく。 「ありがとうクロエ」 「たくさん楽しみましょうね」  クロエは僕をみて微笑んだ。

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