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第32話 慈善事業 ②

「こ、ここは……」  着いたのは、僕が育った孤児院があった場所。  でも綺麗に建て直されていて、昔のあの隙間風が入り込む孤児院と同じとは思えない。  隙間風が入り込み、雨が降れば雨漏りし、ガラスが割れても治すお金がなかったから、木でその窓を塞ぎ、室内はいつも薄暗く、湿っぽかった。  だけど、目の前にあるのは美しい外壁に大きなま窓がいくつもあって、正面の窓にはステンドグラスで神様が描かれている。 「ここって、僕がいた孤児院ですよ……ね」  確認するようにヒューゴ様を見上げると、 「はい、一度、私も見にきたことがあるので、ここはユベール様が育った孤児院です。でもどうして……」  ヒューゴ様も場所を聞かされてなかったのか、ビックリしている。 「クロエは知ってた?」 「まさか! ここがユベール様の育った孤児院だということも、知りませんでした」  クロエは孤児院の様子を見ようと、キョロキョロ見回す。  ここの子ども達は何でも自分でできる。  それに教会も綺麗にしてもらっていて、補修するところもない。  ここで慈善事業なんて、何をすればいいんだろう……。  腕組みをしながら考えていると、 「ユべ——ル様——!」  遠くから懐かしい声と、子ども達が走ってくる音がする。 「ユベール様!」  数人一度に抱きつかれて、後に倒れそうになる。  でもそのことを見越していたのか、ヒューゴ様に受け止められ、後に転ばずにすんだ。 「ありがとうございます」  お礼を言うと、子ども達は 「いつも(・・・)ありがとうございます」  頭を下げて元気にお礼を言う。  いつも(・・・)  どういうことなんだろう?  女の子達は、 「ヒューゴ様って、こんなに素敵な人だとは思ってなかった」 「どきどきするね」  頬を赤くしながら、話している。  話の内容からして、ヒューゴ様のことは知っている。  でも会うのは初めて……。  ん~ん。  首を傾げていると、 「ユベール様、ヒューゴ様、クロエ様。今日はこんな遠くまでご足労、ありがとうございます」 「神父様!」  神父様は僕にとって命の恩人だし、育ての親。  昔と同じ、僕を家族のように話したいけれど、僕は帝国第一王子の側室。  神父様と身分が違ってしまった。  僕と神父様の間に距離を感じる。  それに神父様と最後にあった時、僕のことを助けてくれようとしていたのに、僕は神父様の気持ちを無視して出てきてしまった。  神父様に会えた嬉しさとともに、寂しさと、申し訳なさでいっぱいになる。 「あのとき、神父様は僕を助けてくださろうとしたのに、その気持ちを踏み躙ってしまって、ごめんなさい……」  神父様の顔が見れない。  下を向いていると、視界にごつごつして僕の頭をよく撫でてくれた大きな手が見え、その手が僕の手を包み込む。

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