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第33話 慈善事業 ③

「ユベール様がお元気でいてくださるのが、私は一番嬉しいです。私達のことを忘れず気にかけてくださる優しさが、本当に嬉しいです。ありがとうございます」  荒れてあかぎれのある手は今も昔も変わらず、僕の後悔を優しく包んでくれる。 「ユベールが殿下にこの孤児院を助けてくれるように、いってくれたんでしょ? ありがとう」  5歳ぐらいの女の子が言う。 「僕とは口約束だったから、本当に僕との約束を守ってくださった殿下に、感謝すべきなんだよ」  そうだ。  言ったのは僕だったけれど、嘘をついた偽物の側室である僕との約束を守ってくださったのは、殿下だ。  冷酷な人がそんなことできるはずばない。  今まで、僕は殿下の何を見てきたのだろう……。 「ユベール様、見ていただきたいものがあります」  牧師様が教会の裏手を指差した。  教会の裏手には、大きな野菜がたくさんできている畑があった。  僕がいた頃は土が痩せ、日当たりが悪く、作りたくても野菜はほとんどできなかった。  なのに今は畑に溢れんばかりの野菜、野菜。   種類もたくさんあって、飽きることもなさそうだ。 「この畑の作り方は、殿下が教えてくださりました」 「え?」  戦いしかしないと言われている殿下が?  人を殺すことしか興味がないと言われている、殿下が?  畑仕事をされたの?  想像ができない。 「畑が痩せていたので、調合した肥料をまき、畑を肥やしてくださり、野菜の上手な育て方を教えてくださりました。この畑は殿下の畑と言っても過言ではありません」  「殿下の畑……」  噂の殿下では想像がつかないけれど、今まで僕が見た殿下では想像がつく。 「それにこれを……」  牧師様から一通の手紙を受け取る。 「宛名を見てください」  宛名は予想外の人の名前が書かれていた。 ーアレキサンドロスー  殿下の名前があった。 「これは……」 「ユベール様へのお気持ちが書かれています。お読みになってください」  手紙を勝手に読むなんて、ダメなことだと思ってる。  でも殿下が僕のことをどう思って、何を求めているのかがしりたかった。  封筒から手紙を取り出す。

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