34 / 83

第34話 慈善事業 ④

『教会の子ども達は元気にしているか?  ユベールは元気ではない。  守りたくて部屋に閉じ込めたせいで、あの明るいユベールから笑顔が消えてしまった。  宮殿に来てから、ユベールはいつも怯えている。  私は人に優しくするとは、どうすればいいかわからない。  先日、せっかくユベールが自分の意思で動き出したのに、私はそれを罰してしまった。  私は帝都を離れるわけにはいかない。  そこで牧師。ユベールの笑顔が戻るまで、しばらくユベールを預かってもらえないだろうか?  ユベールに安心して過ごせる場所を作ってやってほしい。  護衛の者と侍女をつける。  腕のたつ2人だから危険はないと思うが、何が異変があれば、すぐに知らせてほしい。  よろしく頼む。  ーアレキサンドロスー     』  まさか殿下がそんなことを、考えてくださっていたなんて。  顔を上げて牧師様を見る。 「殿下はとても不器用でいらっしゃいますが、いつもユベール様のことを考えておいでです」 「……」 「殿下は孤児院の子ども達のことも気にかけてくださり、読み書きができるようにと、たくさんの本を寄贈してくださる方です。新しくしてくださった孤児院にも、いつでもユベール様がいつでも帰ってこられるよに、ユベール様のお部屋も作られました。安心してください。殿下はユベール様をとても大切に思っておられますよ」 「殿下がそんなことを……」  知らなかった。  殿下が僕のために、そんなことをしてくださってたなんて。  気持ちを砕いてくださっていたなんて。  知らなかった。  本当に?  本当に知らなかった?  そうじゃない。  僕は殿下の噂を鵜呑みして、初めから殿下を色眼鏡で見ていた。  勝手に殿下は『冷酷で非道な方』だと決めつけていた。  本当の殿下を見ようとしていなかった。 「殿下、ごめんなさい……」  自然と声に出していた。 「今のお気持ちを、殿下にお伝えなさってはいかがですか?きっと殿下も安心されると思いますよ」  牧師様は微笑んだ。 「はい!」  僕に迷いはなかった。

ともだちにシェアしよう!