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第70話 手作りの昼食 ③

 調査に出るまでの間、僕とアレクはずっと一緒に過ごした。本当はアレクほどの位の人は使用人が使う場所には入らないものだけど、アレクは僕と厨房に入ってパンを焼いたり、庭師と一緒に花の手入れをしり城下に出かけたりもした。  初めて城下を訪れた時は、みんなに恐れられていたアレクも、二度目からは街の人から大歓迎され、道で会う人会う人に「アレキサンドロス様!」と声をかけられていた。アレクの本当の姿を街の人達に知ってもらえて本当に嬉しい。   食事も一緒に食べ、侍女の手を借りず一緒にお風呂に入る。夜はベッドで啄むような口付けから始まり、徐々に深い口付けになり、そのまま肌を重ねる。   ピンク色の乳首が赤いくなる捏ね回され、どこを触れられても、身体が敏感に反応してしまうほど全身に口付けされる。はじめはアレクの指を受け入れるだけでも違和感があった媚肉も、今では触れられていなくても、媚肉も蕾もアレクを欲しがりひくついてしまう。  何も知らなかった僕の身体は、アレクに触れられだけで、熱い視線で見つめられただけで身体が火照り疼くき、アレクを求めるようになってしまっていた。    調査自体を隣国や盗賊に知られないために、出発は夜中だった。黒いマントを見に纏い、アレクが馬を先頭に連れていく。 「アレク、気をつけてね」  言いたいことはたくさんあったけど、これ以外言葉が出ない。本当はすぐに帰ってきて欲しい。盗賊に出くわさないでほしい。戦いがないまま帰ってきてほしい。言い出したらとまらない。願うことはただ一つ。怪我なく元気に帰ってきてほしい。 「ずっと待ってるから」  涙がこぼれそうだったから、気づかれないようにアレクの胸に飛び込んだ。 「俺は強い。だから心配するな」  アレクは優しく僕の頭を撫でた。今度いつこの大きな手で、僕は撫でてもらえるのだろう?今度いつこの逞しい腕で引き寄せられ、抱きしめてもらえるのだろう?あの優しい声で「ユベール」と呼んでもらえるのだろうか……。 ー行かないでー  言えたらどんなにいいだろう。でも国民を守るのがアレクの責務。 「早く帰ってきてね」  引き締まった胸に顔を押し当て、アレクの香をめいいっぱい吸い込み体を離した。 「ああ、安心しろ。すぐに帰ってくる」  アレクは僕の額に口付けをした後、見送りに来られた皇帝陛下に一礼し馬に乗る。そしてアレク率いる一軍の馬が静かに動きだす。  アレク、どうかご無事で……。  遠くなっていく背中が見えなくなるまで、僕はアレクを……アレク率いる一軍を見送った。

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