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第82話 重なり合う ①

 僕とアレクが結婚し、ハイネを養子に迎えいれると決めた次の日。  僕たちは皇帝陛下に報告に向かった。陛下は僕たちの決断を快く承諾してくださり、晴れて僕達は婚約した。   いつもは陛下の隣にあった皇后の席はもうなく、皇后の側近がナーシャ様殺害とアレク殺害未遂を白状し、皇后とマティアスは牢獄に閉じ込められ、まもなく裁判にかけられるとのことだった。  アレクの傷は2ヶ月の安静を言い渡されていたけど、「鍛錬を怠ると体が鈍る」とアレクはすぐに体を鍛え始め、1ヶ月経った頃には傷はほぼ完治し、ハイネに稽古をつけるほどになっていた。  それと並行して、僕たちの結婚式の準備も行われていった。珍しい食材や珍しい調度品が集められ、各国の王に招待状も贈られる。  僕とアレクとハイネの婚礼衣装は、宮廷のお針子とティナとの共同で作られ、宮廷の人々と城下の人たちのとの交流ができた。  僕たちの周りで、たくさんの人たちの輪が広がり、たくさんの笑顔が増えていっていることが嬉しかった。  そして結婚式当日。  朝早くから式ははじまり、夜遅くまで開かれていたパーティーが終わると、僕とアレクは途中に寝てしまったハイネを、ベッドまで連れて行きそっと寝かせ部屋を出た。 「きょ、今日の結婚式、凄かったね」 「ああ」 「あんなにたくさんの人が来てくれるなんて、思わなかった」 「そうだな」 「ハイネも朝から張り切ってて、可愛かったし」 「本当に」 「そ、それじゃあ……僕たちも寝よっか」 「……」  それまで僕の言葉に返事をしてくれていたアレクが、急に黙った。 「アレク?」  名前を呼んだ途端、身体をを抱き寄せられ口付けされる。  壁に体をを押しやられ、アレクは大きな手で僕の後頭部をしっかりと押さえ、より深く口付けをする。  ぬるりと口内に入ってきたアレクの舌が、僕の舌を絡めとる。その一瞬で、体の力が全て抜け切ってしまうような快感。  誰が通るかわからない廊下。もしかしたらハイネだって起きてくるかもしれない。だが、 「ン……ン、んんっ…」  甘い声が漏れてしまった。  何度口付けをされても、頭に霧がかかったように何も考えられなくなってくる。  上顎を尖らせた舌でくすぐられると、一気に身体に熱が帯びてきた。  ねだるように舌を突き出すと、アレクは微笑み舌を絡め取ってくれる。  くちゅりくちゅりと唾液が混ざり合う音が、廊下に響く。  息もできないほどの深い口付けで、意識が飛びそうになる。そうしてアレクはようやく深い口付けから解放してくれ、ぐったりしている僕を抱き上げ、寝室にかった。 「ん、う……ン……フゥ、ンン……」  ベッドに押し倒され深い口付けをすると、アレクの手が服の中に入ってくる。  それだけで期待してしまった身体はビクンと跳ね、乳首も楔も反応してしまう。  もっと触って欲しいのに、婚礼衣装がそれを阻む。 「アレク……、待って……」  キスに溺れそうになりながらも、覆い被さってきていたアレクの胸を押した。 「どうした。今日も怖いか?」  アレクが怪我をして以来、傷口が塞がり肌を重ねようとすると、アレクが刺され倒れ、絨毯に血溜まりが広がっていくことが思い出されてしまい、どうしてもその先に進めなかった。  またアレクの傷が開いてしまったらどうしよう。そこから血が溢れたら、どうしよう。  そんなことばかり考えてしまうと恐ろしい。  でもその反面、アレクに激しく抱かれたいとも思う。 「傷口は完全に塞がっている。でもユベールがまだ怖いと言うなら、今日もこのまま添い寝しよう」  服の中に入ってきていたアレクの手が、抜かれる。 「待って!」    咄嗟にアレクの手を掴んだ。 「肌を重ねようとすると、あの時のことを思い出してしまって、本当は怖い」  そういうと、アレクの瞳が悲しそうに揺らぐ。 「でもアレクと肌を重ねたいと思うのも本当。深く愛されて繋がりたい。矛盾してるよね」 「……」 「だから今日は、僕にさせて」  僕はアレクの服のボタンに手を伸ばす。婚礼衣装なのですぐには脱がせられない。   アレクはゆっくり立ち上がると、僕が脱がせやすいようにしてくれる。 「手伝わなくていいか?」 「うん。僕がしたいんだ」  そう言ったけど、複雑な作りすぎて何がどうなしたら服を脱がせられるかわからない。 「う~ん、やっぱり手伝って」 「ああ、その方が良さそうだ」  二人でアレクの服を脱がせていく。 「引っ張ったら装飾取れちゃうから、気をつけてね」 「そうだな」 「ユベールも脱ぐ?」 「うん。アレク脱がせて」  なんて話しながら脱がせていく。 「何だかこうして二人で脱がせあいっこしていると、全然雰囲気ないね」 「そうだな。全く雰囲気がない」  二人顔を見合わせて笑ってしまった。  二人とも裸になってベッドに潜り込むと、アレクが僕を抱きしめてくれる。 「このまま抱き合って寝るのも俺は好きだけど、ユベールはどうしたい?」 「僕は……」  アレクの傷跡に手で触れる。縫った跡があって、皮膚もボコボコしている。 「痛い?」 「もう痛くない。俺は強いからな」 「強いから痩せ我慢してる場合があるんだよ」  僕がそう言うと、アレクはアハハと笑った。 「おやすみユベール」  いつものようにアレクが僕の額に口付けをしたから、僕はモゾモゾと布団の中に潜っていく。 「ユベール?」  アレクは布団をめぐり、僕の様子を見るために上半身を起こす。 「僕はこうしたい」  アレクの傷跡に口付けをする。  見れば見るほど痛々しいし、あの時のことを鮮明に思い出す。  アレクが死んでしまうと、恐怖が襲ってくる。  でも恐怖があるからって何もしないと、次に進めない。  僕はアレクと愛を確かめ合いたい。熱っぽい瞳で射抜かれたい。繋がりたい。 「無理しなくていいんだぞ」  アレクはそう言っているが、楔はすでに硬く立ち上がっている。 「ううん。アレクと繋がりたいんだ」  僕は完全に立ち上がったアレクの楔を、口に含む。アレクの楔は大きく太く長く、僕の口の中には収まらない。でも喉の奥にあたるぐらい、深く咥え込み上下する。 「っく」  短くアレクが唸った。  アレクはもう感じてくれてたんだ。  嬉しい。  今度は睾丸を揉みながら、楔を吸い上げる。先端から精が滲み出てアレクの味がする。それが嬉しくて、もっと奥に咥え込む。  咥え込めば咥え込むほどお腹の中が切なくて、自分の指を蕾から蜜壺の中に入れる。 「はぁ…ぁぁ…」  身体はアレクの指も楔も覚えていて、僕の指では切なさが増していく。

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