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第2話-1 嘘だろ何も思い出せない!

 窓から差し込む光がまぶしくて俺は目が覚めた。だが体のあちこちがきしむ。筋肉痛のような感じだ。はて?昨日なんか運動したっけか? 「ぁれ? あれれれっ」  起き上がろうとしてまた布団に倒れ込んだ。下半身に力がはいらない。 「倉沢? 大丈夫か?」 「……安住? そっか。俺昨日飲みすぎたんだな」  ぼんやりだが思い出した。昨日は久しぶりに安住と会って飲みに行ってそこの料理と酒が旨くてついつい飲みすぎて……。ここって安住の部屋だよな? 「え? まぁそうだな……。飯食えるか?」 「う~。頭いてぇ。二日酔いみたいだ」 「そ、そうか。じゃあ味噌汁だけでも飲まないか?」 「お? サンキュー。もらうわ」  かいがいしく安住がベットの上まで味噌汁をトレイで運んでくれた。 「お前料理できるのか? すげえな。この味噌汁出汁がきいてて旨い」 「よかった。口にあってくれて」  安住がニコニコと嬉しそうだ。背後にぶんぶん振ってる尻尾が見えそうだな。 「悪いな。俺昨夜の記憶があまりなくって。お前に迷惑かけちまったんじゃねえのか?」 「迷惑だなんてとんでもない。僕こそ昨日は興奮しちゃって無理させちまった」 「……ん?」  何故か安住の視線がやたらと熱い。 「あ……あのさ。倉沢はどこまで覚えてる?」  戸惑いがちに俺の手を握りだした。 「俺、やっぱり何かお前にしたのか?」 「いや、ヤッちまったのは僕の方なんだけど」 「よくわかんないが、すまねえ。トイレに行きたいんだが手を貸してくれるか?」 「うん。その、よく掻きだしたつもりだったんだが……」  もごもごと言いづらそうにしながら俺を支え連れて行ってくれた。  用を足して洗面所に立つと鏡の前で絶句した。 「なっ。なんだこりゃ!」  首から下にぽつぽつと赤い跡が見える。 「??……虫刺され……じゃないな」  そういえば尻の間に何かが挟まってるような違和感がある。 「まさか……。俺……」  顔面蒼白なまま出てきた俺を安住が息をのんで見守っていた。  安住の顔が直視できない。時間と共に少しづつ昨夜の事が思い出される。タクシーでこの部屋に入った時までは何となく覚えてる。だがその後の事があいまいすぎて思い出せない……っ! 「お前、昨日……俺の事……その、抱いたのか?」 「あのさ。合意だから!無理やりじゃねえからっ。だから……」 「本当に悪い……思い出せねえんだ。だがお前が無理やりな事しねえってのはわかってるよ。きっと飲みすぎたノリだったんだよな?」 「いや。倉沢。僕は……」  おいおい。責任取るとか言わねえだろうな。女子じゃあるまいし。 「いいんだよそれで!昨日は飲みすぎたんだっ」  俺の言葉に安住が愕然とした表情になる。

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