4 / 53
第2話-2
「…………そのほうが……お前はいいのか?」
「ああ。それでいいんだよ。ただの友達同士の悪ふざけだ」
「……そうか……悪ふざけだったのか……」
悲しそうな安住の顔に胸が痛む。なんでヤられた俺の方が罪悪感にかられるんだ?
その後なんとなく居づらくなってしまった俺はシワのついたスーツを着込みタクシーに飛び乗る。俺を送っていくときかない安住の手を振りほどいて逃げるように帰ってきたのだ。
どうせこのあとプロジェクトが路線に乗ればあいつは今よりも忙しくなるし顔を会わすことも減る。数年後には俺とのことは笑い話にでもなっているだろう。
そんな風に整理できていない自分の気持ちを押し込めて出社したのだが……。
「倉沢くん。今朝の辞令みたか?」
珍しく部店長がいきなり声をかけてきた。
「は? 辞令ですか? いえ、まだみておりませんが」
「はははっ。この支店を代表としてチームリーダーに選ばれるなんてなかなかのものだぞ。精々がんばってきてくれよ!」
「代表ですか?」
俺は急いでパソコンを開けた。そこには今回のプロジェクトの一員として中央に出向せよという文面が目に入る。
「やっぱり、研修に選ばれた者がプロジェクト候補だったんだねえ」
部店長の呑気な声が社内に響いた……。
――――何の因果か。一週間後。俺はまた中央の研修センターにいた。新規プロジェクトはここのワンフロアの一室からのスタートとなるらしい。
「……であるからして。今回は企画と渉外の二人一組でペアになってもらう。そうすることにより仕事における互いの欠点を補い問題解決の糸口を早めに見つけるんだ」
企画のチームリーダーは予想していたどうり安住だった。つまりは渉外のリーダーである俺とペアは確定である。普段はチームで仕事をし、ペアで今後の個別の取り組みを考えていく形式だ。
「……よろしく」
「こちらこそ。じゃあ早速だがこちらの企画書にまずは目を通してほしい。まずはここなんだが……」
気まずい雰囲気は最初に互いの顔をみた瞬間だけ。仕事モードになると安住はテキパキと意見を述べ指示をしてくる。こちらも負けじと疑問点や改善点を述べる。俺と同様に安住も仕事とプライベートのオンオフの切替えはきちんとできてるようで安心した。
(安心したってなんだ俺? 何を期待してたんだ?)
ともだちにシェアしよう!