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第4話-1 同居のスタート

 緊張しながらスタートした同居だったが帰宅はいつも俺の方が遅かった。得意先や新規クライアントの打ち合わせに駆けずり回ってるからだ。 「おかえり。ご飯炊いてあるからね。今日は塩鮭とほうれん草のお浸しと卵焼き。鍋に味噌汁もあるから」  部屋に自分以外の人間がいるなんて不思議だ。おかえりって言われるのが嬉しいと感じてしまう。 「ただいま。すまねえな。いつもありがとう」  それに俺は料理はまったくできない。たまには安住を手伝ってやろうとは思ってはいる。いるのだが……。 「僕は先に食べたから。部屋に籠るよ。おやすみ」  一緒に暮らし始めても安住は必要以上に俺に接触してこない。きっとあいつは俺が怖がってると思ってるんだ。何|怖気《おじけ》ついてるんだ俺は。なんのために一緒に住み始めたんだか。 「あのっ。あのさ。良かったらちょっと資料の確認して欲しいんだ」 「資料? 昼間に社で渡したやつ以外に何かあるのか?」 「えっと。正直に言うと俺さ。一人で飯食うのってちょっと味気なくてさ。食べる間だけでも一緒に居てくれたらいいなって」 「その。僕もちょっとコーヒーが飲みたいなって思ってたんだ」  安住が照れくさそうに笑う。可愛い顔しやがって。 「じゃあこっちこいよ」 「……うん」  おずおずと俺の目の前に座る。反省してる大型犬みたいだ。 「あぁ。やっぱりお前が作った味噌汁は美味いな」  俺の一言でぱあぁと安住の顔が輝く。なんてわかりやすいんだろう。 「ありがとう。今日は豆腐としめじにしたんだ。何か食べたいものとかないか?」 「リクエストしていいのか?そうだなあ。鍋とかどうかな?」 「鍋かぁ。そういえばトマト鍋とか一時期流行ってたな。最後にチーズとごはんを加えてリゾットにして食うんだ」 「おおっ。それ!いいな。それにしようぜ」 「ふふふ。好き嫌いはないって言ってたからいつも適当に作ってたけど。やっぱりリクエストもらうとはりきり甲斐があるよ」 「そうか。じゃあこれからも一緒に考えようぜ。俺のばっかじゃなく、お前が食べたいもんも作ってくれよ」 「……倉沢は優しいな」 「ばあか!お前気ぃ使いすぎなんだよ。俺らはペアで|阿吽《あうん》の呼吸ができるぐらいお互いの事を分かり合えるようにならなきゃいけねえんだろ?」 「うん。うん、そうだな」 「ばか。泣くなよ」 「泣いてないよ。ただの花粉症」 「突然花粉症になったんだな?くくく。わかった。そういう事にしておいてやろう」

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