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第10話-1 いつも二人で
それから毎晩、夕食の後に愛撫が追加された。安住は限りなく俺に優しい。俺が嫌がる事はしない。その匙加減がわかってるようで、ちょっと悔しいぐらいだ。
ときどき俺はもう男にしか興味がないのかと不安になって女性グラビアとかみてみたが普通に反応した。つまりは安住が上手すぎるのか?いや、安住が俺にとって特別になったのだろう。
「難しく考えすぎなんじゃない?健吾は真面目だから」
「そうか?そうなのかな?」
そうだよと安住に言われるとなんだか悩んでた事自体が馬鹿らしくなる。
「でも僕以外で試そうとしないでね。そんなことしたら嫉妬に狂うかもしれないよ」
安住の笑顔が微妙に怖い。
「やめてくれ。他の男なんて想像するだけでも無理だ」
「うん。そっか。僕男って言ってないんだけどな」
安住が嬉しそうに返事をする。今日はすき焼きにしようか?なんて豪勢なことも言い出した。なんか俺はまた喜ばすことを言ったのだろうか?
ある日、本社から古参の重役の一人、花崎がやってきた。昔気質の考えで俺らが携わっているプロジェクトをあまり良く思ってない様子だった。
「もっとわかりやすく日本語で話さないかと言ってるんだ!」
企画に出されているカタカナ用語がわからないらしい。噛み砕いて説明をすると何故それを文面に表さないんだと怒鳴り散らした。
「いいか。顧客にもわかりやすい文面でないと受け入れられないんだぞ。ちょっと難しい言葉を知ってるからとエラそうに使いまくりよって」
「ふむ。……たしかにそうですね。では、ここに注釈を入れましょう。それといっそのこと、この長い文章をざっくり失くしましょう。そのかわりこのあいたスペースには文章に通じるようなイラストを入れたらどうでしょうか?」
安住はテキパキと変更と手直しを入れていく。
「いやあ、さすがですね。花崎さん。問題点をすぐに指摘してくださるとは。お見それしました」
俺が頭を下げれば安住が目くばせをする。
「うっ。わかればいいんだ。わかれば」
花崎はふんぞり返るようにして部署中を見回す。
「この時期にやってくるとは。査察を兼ねた牽制だろうな」
「ああ。注目を浴びている部署が気に入らないんだろう」
「わざとマイナス点を見つけて指摘し、うちの部署の予算を自分のところの予算に回させたいのかもよ」
「うちは結構予算回してもらってるもんな」
「荒探しには気をつけないとな」
「しかしあと数日はこの調子か。疲れるなあ」
「ふふ、その分寝る前にしっかり可愛がってやるよ」
「ばっ!ばか。何言ってるんだ。こんなところでベットの話なんて」
その時はたわいもない俺たちのやりとりをこっそり花崎が覗いてるとは気づいてなかった。
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