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第10-話2

「今晩はわしの歓迎会を開いてくれるんだろうな?居酒屋でいいぞ。大勢が入れる店がいいだろう。酒の肴が美味い店ならどこでもいいぞ」 「えっ。今晩って?俺たちまだ仕事が残ってるんですよ」  早瀬が露骨に嫌そうな言い方をした。 「何?お前上司のいう事が聞けないのか?」 「そういうのをパワハ……」 「すみません。花崎さん、そいつはまだ若くて冗談が通じないのですよ。俺が美味い店知ってますんで良ければお誘いしますよ」 「そうか。まあ室長の倉沢がそういうなら大目に見てやろう」 「早瀬。仕事に戻れ」 「……わかりました」  そのまま俺は花崎を居酒屋に連れて行った。結局部署の若い連中を巻き込むわけにも行かず俺は花崎の愚痴をひたすら聞かされる羽目になった。 「であるからして。わしのようにたたき上げでここまで来た者にしたら、目新しいことだけに注目するのは間違っとるんじゃ!何が持続可能だ。笑わせるんじゃない。ちょっと持てはやされてるからって、お前図に乗ってるんじゃないだろうな?ええ?わかっとるのか!」 「はいはい。そうですね。花崎さんのいう事ももっともですね~」  大丈夫か?絡まれてないか?と安住から心配そうなメールが入る。もうすぐ帰るとだけ送って花崎の機嫌をとっていた。 「ならば、もっと飲め!わしがついだ酒は飲めないのか!」 「いや、明日も仕事なんでこれ以上は勘弁してください。そろそろ帰りましょうか?」 「よし!お前がわしをホテルまで連れていけ!」 「はあ?タクシー呼びますよ」 「だめだ!それともなにか。お前、安住以外の男には肩も貸せないというのか?はっ。この変態め」  なんだこいつ?なんでここに安住の名前が出てくるんだ?とにかく早く店を出た方が良いと配車アプリでタクシーを呼ぶ。 「安住は関係ありませんよ」 「はん。何を言う。お前、男が好きなんだろう?ああん?」  店を出た途端に尻を掴まれる。 「ほう。丸い良いケツをしておるな」 「やめてくださいって。悪酔いされてるんですね?」  やんわりと俺が断ろうと振り返ると鬼のような形相の安住がいた。 「何をしているんですか?」  ドスの効いた声で花崎の手をつかんで睨みつけている。 「な、なんじゃお前は上司に向かって」 「その上司がセクハラしても良いと思っているのか?」 「はん。男同士じゃないか。セクハラになるものか!」 「なるんですよ。貴方は今の社会の常識を知らなさすぎる」 「おい。安住……」 「はん。この変態やろう。どうせこの後、そいつのケツで楽しむんだ……」  気づけば俺は花崎の胸元を掴み上げていた。 「これ以上安住を馬鹿にすることは俺が許さない。俺らは本気で付き合ってるんだ。あんたにどうこう言われる筋合いはないぜ」

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