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第10話-3

「ふはははっ。とうとう言いおったな!この変態野郎が!本社に通告じゃわい。こんな部署すぐにつぶしてやる!」  花崎が俺の腹に蹴りをいれる。ぐらついた隙を狙って俺の手から離れた。 「なにっこの……」 「倉沢っ。大丈夫か」  そこへ運悪く配送のタクシーが到着してしまい、花崎はそれに飛び乗って行ってしまう。 「くそっ。あの野郎!」 「すまん。倉沢。僕が余計なことをしたばっかりに」 「お前は悪くないだろ!」 「……健吾。ありがとう」  倉沢が俺を抱き寄せる。小さな声で僕は幸せ者だとつぶやいていた。  次の日から花崎は来なくなった。それとほぼ同時に本社からはメールで事の顛末についての事情照会が送られてきた。  俺は事実を送った。花崎がどう報告したかは知らないが、部下への高圧的な態度のパワハラ。それと酔って絡んだ上でのセクハラ。俺への暴力。花崎はわが社の新規約を理解してなかったのだろう。  新プロジェクトは今の世評を反映されたものだ。男女平等、ジェンダー。性的マイノリティ。これらを理解できずに改革を実現して行こうというのは難しいだろう。俺は本社はわざと花崎を送り込んできたのだと思っている。今後この会社に必要な人材なのかを見極めるために。 「倉沢。本社からの返事はどうだったんだ?」 「ああ。きっと大丈夫だよ。元よりこんなことがまかり通る社なら俺は転職するよ。お前を馬鹿にしたことのほうが腹が立つ」 「そんなっ。お前は辞める必要なんかない。辞めるのは僕だ」 「だめだ。お前ほど仕事ができるやつを俺は知らない。それにこの部署はお前にあってるだろ?」 「だからって。お前にやめて欲しくない」 「ただでは辞めないさ。それにまだ俺らがやめるとは決まっていない」  自信満々な俺に安住が怪訝そうな顔をする。 「倉沢。お前本社になんてメールしたんだ?」 「お前は俺の婚約者だと送ったさ」 「!! こ、婚約って。いいのか?僕でいいのか?本気なのか?」 「ああ。パートナーシップ制度を使う」 「本当に本気で考えてくれてたのか」 「お前俺の言ったこと覚えてないのか?『もう腹はくくった』って言っただろ?和真が俺の事を本気で好きなら俺もそれに答えるのがあたりまえだろうが!次の休みに指輪を買いに行くぞ!」 「ま、待って。急すぎて。夢みたいで……」  ぼろぼろと安住が泣きだす。身体から堕とそうと思ってたのにって。なんだ、だから毎晩愛撫を繰り返してたのか?

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