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第10話-4

「そう……だな。先走って社に報告してしまった。自分勝手なことして済まない。まずはお前にきちんと言うべきだったな」 「……健吾」 「俺と結婚してくれ。俺はもうお前の飯なしでは生きていけない」 「ぷっ。なんだそれ。僕の飯に惚れてくれたのか」 「ははは。胃袋を掴まれたのさ」 「うん。うん。良いよ。一生美味いもん作って食わせてやる」 「今回、花崎の件はいいきっかけになったと思ってる。いずれは言いだそうと思っていた事だから少し早まっただけなんだが。寮を出て一緒に暮らそう。俺についてきてくれるか?」 「健吾、お前めちゃくちゃカッコ良すぎ」 「ははは。後悔させないよう頑張るさ」  その後、花崎は地方へ|出向《しゅっこう》となったらしい。要するに|左遷《させん》だ。会社からはジェンダーに関して理解できる社員がいるという示しにもなるから、早く結婚式をあげろと言われた。 「まさか。本社が認めるなんて。そんな寛大なことがあるなんて」 「ああ。まだまだ差別は残っているだろうが少しづつ扉は開かれていくだろう」  本社からは熟年の紳士が一人派遣されてきた。年配の方だが理解があって物腰が優雅な人だった。 「老いも若いも関係なく得意分野を伸ばしていく仕事をしていきましょう。私は花崎と同期でした。彼については私からも謝罪させて欲しい。悪い奴ではないのだが、昔気質が抜けないやつでしてな。おそらくこれで己の考えも改めるでしょう」 「ええ。わかっています。別にあの方に恨みなどもってはおりません。俺たちについてはまだまだ理解されない部分もあるとは思いますがどうか見ていてください。道は開かれていくと信じています」 「はい。そうなるように皆で進んで行きましょう」 「健吾。やっぱりお前ってすごいな」 「なんだよ。今更だろ?」 「いや、僕が出来なかったことをあっという間に乗り越えるなんて」 「そんなのお前が居たからに決まってるだろ?俺だって一人じゃできなかったさ。和真が俺を突き動かしてくれたんだよ」 「っ!くぅ~。惚れる!ったく。天然タラシめ!」 「たらしってなんだよ?団子みたいに言うなよ」 「それはみたらし団子!もぉ。くくく。はははは」 「笑うなよ。何笑ってんだよ。はは。はははは」  安住の笑いにつられて俺も笑う。この感じが最高に良いな。  この先いろいろな事で笑ったり泣いたり、時には喧嘩もするだろう。だけど。生きていくならコイツと一緒が良い。 「健吾。愛してるよ」 「ああ俺もさ」

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