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閑話その2-2
「……いっそのこと、資料にするか?今回この式場にしたのもLGBTに配慮がある場所だったからだ。俺たちの挙式風景をカタログに使ってみるか?」
「本当ですか!いや、そうできればいいかなとは思ってましたが」
「健吾がいいなら僕は構わないが」
安住はまだ親族全員にカミングアウトができていない。不安はあるだろう。俺はまた先走ったか?ひと言釘を刺しておこう。
「だが、顔のアップは使うなよ。お前たちは腕の良いカメラマンだと俺は信じている。式場の良さも惹き出し、個人が特定できないアングルでの撮影を希望する」
「はい!わかっております!腕によりをかけてご満足のいく作品に仕上げて見せます」
「ふふふ。期待してるぞ」
「おお~!倉沢さんの『期待してるぞ』をいただけました!おい!撮影班、今日は絶対手を抜くなよ」
「すまん。仕事モードに入ってしまった。また勝手に決めてしまったな」
「いや、いいよ。僕もそう思ってたんだ。仕事にも使えたらいいかなって。それにココの系列に同性婚の結婚事例が多いのもわかっていたし」
「ありがとう。俺は理解のある伴侶に恵まれて幸せだな」
「は、伴侶……そ、そうか。今日から僕たち伴侶なんだ」
「俺たち、嫁とか夫とか言うのは変だろ?だから伴侶って呼ぶのが良いかなって」
「うん。そうだね。得意先にも倉沢の伴侶ですって言って良い?」
「もちろん。手続きが面倒だから別姓にしてるだけだしね」
ぱあっと安住の顔が輝く。しっぽがブンブン振られてるんじゃないかな?俺の伴侶は王子様の容姿に中身は大型犬だ。ベットの時は狼だがな。
「なに?急ににニヤニヤしちゃって」
「いや。和真は可愛いなって思ってさ」
「うわ。めっちゃドキドキしてきた。健吾はこういう時しか僕の名前を呼ばないもんな」
「そろそろお時間です」
式場のスタッフが笑顔で呼びに来た。きっと声をかけるタイミングを計っていたんだろう。こういうところはサービスが行き届いている。
パイプオルガンの響く中、一歩ずつ会場に入っていくと俺の母親と安住の母親の姿が見えた。
「母さん……」
安住が口元を抑えた。むせび泣くのを我慢してるようだ。
「よかったな。来てくれて」
「うん。うん。ほんとに……うう」
立会人の前で誓いの言葉を交わし、俺たちは指輪を交換した。
「おめでとう!!」
「あ~ん。素敵ぃ!尊いわ~!」
「おめでとうございます!」
ライスシャワーを浴び、皆の笑顔に元気をもらう。俺は自分の生き方を疑ったことはないが、賛同してくれる人たちがいる。それだけでこんなにも勇気がもらえるんだと知った。
「結婚式。やってよかったね」
「そうだな。俺たちの事をわかってもらえただけでも嬉しい」
「健吾。ありがとう。愛してる」
「俺も愛してるよ。これからもよろしく頼む」
後日出来上がったパンフレットは俺たちの後ろ姿がメインだった。式場に向かう緊張した足取りと繋がれた手。それとほんの少し覗く俺の口元の笑みがすべてを物語っていた。
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