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第2話-3

「ほら、揚げたてのうちに食べてよ」 「ああ!どれから食おうか迷うなぁ」  まずは定番の唐揚げに手を出す。外側はからっとあがっていて噛むとじゅわっと鶏肉汁があふれて柔らかい。すげえ。 「旨いっ! なんでこんなに旨いんだ??」 「ふふふ。ありがとう。健吾はいつもおいしそうに食べてくれるから嬉しいよ」  二人きりの時だけは互いに名前で呼び合うようにしてる。公私でのオンオフをつけるためだ。 「だって旨いじゃないか。お前がつくる料理は全部旨い。次はこれ食ってみるよ」  食べた瞬間ピリッとした辛さがあった。これは柚子胡椒だな。白ご飯と一緒にかきこんで食いたいなと思ったら、安住が茶碗にご飯を盛ってくれていた。  さすがだ。俺の事をわかりすぎてる。無言で頬張りながら黙々と皿の上の唐揚げに挑み始めた。付け合わせの酢漬けは口の中がさっぱりして脂っぽさが抜ける。 「ふふふ。落ち着いて食べていいよ。唐揚げは逃げないからさ」  安住が嬉しそうにほほ笑んでくれた。俺の伴侶は最高だ。  久しぶりの手料理に満喫しつつ、洗い物は俺がかって出た。ここまで旨いモノを食わせてくれたんだ。後片付けぐらいは手伝わないと。 「油だけは先に処理してくれたんだな」  環境に優しいコンセプトは日常でも取り入れている。ひょっとしたら次の企画もすでに浮かんでいるのかもしれない。    寝室に向かうと安住がウトウトしていた。ああ、やっぱり疲れてたんだな。きっと張り切って料理してくれたんだろう。そっと隣に潜り込むと抱き寄せるように距離を縮める。 「和真。いつもありがとう」  やわらかな栗毛をなでると安住が返事をした。 「健吾? もっと僕に……頼ってく……れ」  その言葉にハッとした。俺は何でもできるからと自分本位に決めて進めていくところがある。安住からはこれからは二人で生きていくんだから気負わず良いも悪いも二人で一つで歩んで行こうと言われていた。 「そうだな。また俺の悪い癖が出てたか」  今まで何事も仕事を優先にしてきたせいか自分の事を二の次にしてしまうようだ。安住が食事に誘ってくれなければ俺は過労になってた事も気づかなかったのかもしれない。 「ちょっとぐらい弱音を吐いても良いってことだよな」  安住の左手をたぐり寄せるとやけどの跡がうっすらと赤くなっていた。綺麗な指先なのに。 「和真。好きだよ」  俺は安住のうなじにキスマークをひとつ落とした。 

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