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第3話-1 明太マヨネーズ
展示会では各企業が環境に優しい商品をアピールする絶好の機会だ。
「この案件の製品見本は明日までに間に合うのか?」
「まかせて下さい。納期は伝え済みです!」
客の問いにてきぱきと早瀬が元気よく答える。午前中の商談が一区切りついたところで昼休憩をとることにした。
「今日、倉沢さん機嫌いいって思ってたら、そういうことっすか」
「ん?なんだ?」
まさに今俺は弁当の唐揚げを食おうとしていた。
「それ手作り弁当っすよね?」
「ああ。昼飯を楽しみにしてたんだ」
下味がしっかりついている唐揚げは冷めても旨かった。付け合わせはポテトサラダとブロッコリーとミニトマト。カップソーサーには明太子マヨネーズが入っていた。俺が好きなタレのひとつだ。まろやかな辛さでつぶつぶ感があり、サラダにつけても唐揚げにつけてもいい。
「老舗弁当みたいっすね。旨そう。その唐揚げひとくち食べさせて下さいよ〜」
「いやだ。減る。安住の飯は俺の癒しなんだ」
「えー、ケチくさいこと言わないで一個くださいよ」
弁当を守るように机に伏せると早瀬が覆い被さるようにじゃれついてきた。
「何やってんだ。お前、倉沢に引っ付きすぎるぞ」
冷たい声に顔をあげると、安住が俺から早瀬を引きはがしていた。
「一緒に弁当食おうと思って早めに来たんだ」
「あ!名シェフの登場だ!安住さーん、唐揚げ一個くださあい」
「なんだ、そんなことか。僕ので良かったらやるよ」
「本当っすか!やぁ、倉沢さんって普段は冷静沈着なのに安住さんの事になると子供みたいになって、おかずの一個もくれないんっすよ」
「ばっばか!早瀬、お前言いつけるなよ」
「相変わらず君らは仲がいいね。だが、上下関係はきちんとしないといけないね。ここの室長にそんな態度をとれるのは早瀬くんくらいなもんだけど?」
「すいません。でも安住さんこそ、公私は別って一線ひいてる感じなのに今日はどうしたんす?」
「うっ……倉沢が困ってるようだったから気になって」
「え?やきもち?」
声をあげたのは佐々木さんだ。人数あわせの為、事務からもヘルプ要員できてもらっている。黙っていたから傍に居るのに気づかなかった。すかさず同僚の女性に口を塞がれている。もう一人いたのか? この部署の女性社員は皆気配を消すのがうますぎる。
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