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第3話-2
「くぅ~。……めっちゃ旨いっす!なんすかこの唐揚げ。味が全部違う!俺明日から代金払うんで安住さんに弁当作って欲しいっす!」
早瀬が安住の弁当を奪い食いだした。
「ダメだ!安住は忙しいんだ。コラっ!それは安住の弁当だっ。早瀬お前食いすぎだぞ!」
「唐揚げもう一個。もう一個だけ」
「お前、コンビニ弁当持ってきてたただろ!」
「それ安住さんにあげますから。この唐揚げにカップのマヨつけたらめっちゃ旨いっす」
「ああ。それ手作りマヨネーズに明太子をほぐして混ぜて作ったんだ」
「すっげー。マヨネーズって手作りできるんだ? 旨いっ旨いなぁ」
「だから言っただろうが!安住の料理は旨いって。それに身体に良い素材も厳選してくれるんだ。原料の卵は取り寄せだったよな?」
「倉沢さん愛されてるっすね~」
「な、なに言いやがる。って、あ~ほとんど食っちまったじゃねえか。早瀬、取り戻されると思って早食いしたな!」
「もういいよ。倉沢。僕早瀬のコンビニ弁当食うからさ」
「ったく! 冷めた唐揚げの味も確認したかったんだろ? ほら。口あけろよ」
俺の分の唐揚げをひとつ摘まんで安住の目の前にもっていく。
「えっ……いや、あの……それじゃあ」
あ~んと開けた安住の口の中に唐揚げを放り込むと嬉しそうに目を細める。背後に尻尾がぶんぶん振られてる気がする。
「うん、まあまあかな」
「何言ってんだ。お前が作る飯は最高だよ」
俺は感謝を込めて安住の耳元で囁いた。目じりが赤く染まってる。可愛いな。照れたのかな?
――――「「……尊い」」
佐々木さん達が口をそろえてそう言った。拝むような仕草だ。
なんだ? 変な宗教にでも入ってるのだろうか? 社内では布教活動は辞めるよう注意すべきかな?
「安住さんも倉沢さんの事になったら相変わらず大人げないっすね」
「何が相変わらずだ。早瀬は上司に対する態度や言葉遣いがまったくなおらないじゃないか。いつまで新人気分なんだ」
「ちゃんと仕事の時は使い分けてますよ」
「今は仕事の時間ではないのかい?」
「昼休憩っすよ」
先ほどから小競り合いが続いているが周りから見るとじゃれあってる様にもみえる。一時期のような刺々しさがないのだ。良い喧嘩相手のような関係に収まったのだろう。
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