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第6話-1 やみつき胡瓜

 やはり思ってた展開だったようだ。安住は無意識に俺と似たタイプを相手に選んでいたらしい。 「すまないっ。僕は彼らを倉沢の代わりにしていたんだっ。本当に申し訳ないっ。それに今日のことでよくわかったんだ。本物の倉沢に勝るものなんてない! 僕はただ同じ髪色でスーツを着たやつを……」 「以前聞いた時は一夜限りしか相手にしないといってたな」  あいつはどう見てもそんな感じじゃなかったぞ。 「あ……あいつとは……2回……いや3回くらいだったかも」 「ほぉ。お気に入りだったわけだ」  何が一夜限りだっ。安住のバカめ。いや、こんな尋問みたいんじゃなくて。そういうのが聞きたいんじゃなくて。 「ちっちがっ……倉沢と雰囲気が似てる気がしたんだ」  はあ?俺とアイツのどこが似てるって言うんだ? 「俺はあんな陰険か?」 「違う!違うっ。ただの勘違いだ!倉沢はもっと気品があって漢らしくって精悍でそれでいて天使みたいなんだっっ」 「は? 天使?」 「うん。僕にとっては倉沢は手の出せない尊い友人だったんだ」 「……って酔った勢いでヤラレたけど?」 「わわっ!ごめんよっごめんっ!僕が悪いんだ。ごめんよ健吾。嫌いにならないでくれ」  ついに安住がポロポロ泣き出した。しまった。やりすぎた。俺もちょっとしつこかったな。つきあう前の話しだから浮気ではないし。過去の話にくどくど言っても仕方がない。ただ問題は相手がそうでないらしいって事だ。勤め先も名前もわかってしまったのが面倒だ。 「怒ってるわけじゃねえ。だけど、俺はお前しか知らねえんだ。俺は男が好きなんじゃねえ。安住和真が好きなんだぞ。そこをわかってるのか?」 「わかってる。健吾がゲイじゃなかったってのは」 「だったら二度と俺以外を抱くんじゃねえ!」 「うん。誓う。僕には健吾しかいない!」    「その、だから……今夜は、その」 「いや、……しばらくは別で寝る」 「ええっ?」 「……少し頭を冷やさせてくれ」 「わかった。ごめん」

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