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第1話-2 幼馴染で親友

「いぶき。また暴れたのか?」  帰る途中に幼馴染の板垣レンにみつかっちまった。レンは目敏(めざと)い。俺のちょっとした仕草や行動で何があったかわかってしまうらしい。 「俺のせいじゃねえ。向こうが喧嘩をふっかけてきたんだ」 「……お前は目立つからなあ」 「何言ってんだ。お前だって俺と変わらねえ背丈してるじゃねえか」 「俺が言ってるのは背の高さじゃねえよ。お前には昔から人を惹き付けるオーラがあるんだ。男も女も皆お前に魅入られちまう」 「ぷはっ! そんな風に言うのはお前ぐらいだぜ」  俺なんかよりレンのほうこそ目立つ容姿をしてるくせに。凛とした表情に少しつり目の切れ長の瞳は、いつも冷静で感情の起伏も感じさせない。俺が赤毛の天パーなのに対してレンは艶やかな黒髪だ。周りからはクールビューティーやら氷の貴公子などと呼ばれている。だが俺以外のヤツがこいつに近寄るのは無性に腹が立って牽制してしまう。俺の親が極道だとわかってもレンだけはいつも変わらぬ態度で俺に接してくれる。唯一俺が安心して心をゆだねられる存在なのだ。 「手……腫れてるじゃないか!」 「あ? さっき殴った時、ちょっと痛めただけだ」 「ばかやろっ。利き腕じゃねえか。とにかく俺んちに来い」 「お前はおおげさだなあ」  レンは俺の手を引いて先へ先へと歩いて行く。無表情だが長年一緒に居る俺にはわかる。こういう時のレンは拗ねてる。きっと自分がいないときに俺が危ない真似をしたせいだ。いつだって俺を優先してくれる事に優越感を感じてしまう。 「何ニヤニヤしてるんだ?」 「別に~」  レンが片眉をあげ銀縁の眼鏡をくいっと上にあげる。その何気ない仕草に見惚れる。カッコいいよなぁ。数年前からかけ始めたこのメガネが伊達だということも俺だけが知っている。見た目を更にクールに見せる演出の一つと言っていた。冷静沈着な容姿だがその内側に秘めた闘志は誰よりも熱い。こいつと本気で殴りあったら勝てる気がしねえ。いや、正確には数年に一度ぐらいは殴り合いのけんかをする。するんだが、いつも引き分けになっちまう。そのうちなんで喧嘩を始めたのかも思い出せねえって笑けてきて終わっちまうのさ。

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