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第3話-1*友情じゃねえ
「許すも許さないも俺たちは生きる世界が違うんだよ!」
「違わないさ。俺はお前よりもこっち側なんだから」
「ん? こっち側って?……あれ?」
ふいに身体の力が抜けていく。俺はレンにもたれかかるように倒れ込んだ。頭ははっきりしてるのに腕と足に力が入らない。
「効いてきたか?」
「は? 何言って。お前まさか……」
「悪い。最近お前が俺から離れようとしてるのに気づいてたんだ。だからもう俺も本音で話そうと思ってさ……俺はお前が好きだ。友情じやねえ。恋愛感情でだ! お前の全部が欲しいんだ」
「俺に一服盛ったのか?」
「ドラッグじゃない。弛緩剤さ。それも即効性があるが軽いやつ。すぐに薬が抜けるタイプ。数十分身体に力が入らないだけだ」
それって麻痺系統の薬物じゃねえのか? レンの野郎、信じられねえ!
「いぶき。お前は俺が嫌いか?」
男らしい血管が浮き上がった手で眼鏡を外すとまっすぐに俺を射抜くように見つめてくる。ああ、相変わらず長いまつげだなあ。って見惚れてんじゃねえぞ俺!
「……んなわけねえだろ!」
「俺はずっとお前の傍にいたい。お前だけを見続けていたいんだ」
まったくコイツときたら俺が恥ずかしくって口に出せないことをよくもまあぺらぺらと。
「お前が俺に友情以上の感情を持ち合わせてないのも知っている。だから身体から堕としたいんだ。俺なしじゃいられないように」
「な、ななななななにぃい?」
レンに噛みつくようなキスをされ押し倒される。引き離そうとしても力がはいらなくてしがみつくような格好になる。
「んん……ふ……っん……んん」
滑り込んできたレンの舌が俺の口内で暴れまくる。鼻から抜けるような自分の声が甘ったるくて赤面する。やがてレンの腕が下がり俺の衣服をはぎ下着に手をかけた。
「んん~! んんっ」
レンに口を塞がれてるからくぐもった声しかあげられねえ。
俺の下着の中の暴れん棒が撫でられた途端に勃起したのがわかった。ぎゃあ。なんだよ、俺の身体って正直すぎるだろ! だめだ。そんなに擦るなっ。気持ちよくなるじゃねえか!
「んぁ……」
「ふ……いぶきも感じてくれてるんだ? 俺の手で興奮してくれてる」
「言うなっ。この馬鹿っ」
「そうだ。俺はお前の前じゃあ馬鹿になるんだ。好きすぎてどうにかなりそうなんだよ」
拗らせてんのか? 俺のせい? 嘘だろ? お前みたいに何でも出来る奴が。俺を? わわっ。どこ触ってんだよ。ケツ揉みまくるなよ。
「まっ、待て。俺、後ろは始めてなんだよ!」
「知ってる。お前の事ならなんでも知ってるよ」
「だったら……え?」
いつのまにかレンの手には透明な液体が入ったボトルが握られていた。
「……なんでそんなでっけえボトルが……」
「ついね。いぶきの事を考えてたらたっぷり使えるのがいいかなって」
「……たっぷり?」
それって潤滑剤とかだよな。コイツどれだけする気なんだ?
「ふふ。いぶきったらさっきから赤くなったり青くなったりしてるね」
「ばっ! 誰のせいだと思って!」
「ごめんごめん。俺のせいだね」
なんだ? いつもの自信はどこにいった? そんな情けない顔するなよ。への字眉に揺れる瞳が可愛いって思っちまうじゃねえか。ああ、もぉ。
「……好きだよ」
「え?……いぶき?」
「好きだってんだよ。レンのこと。だからこそ一緒に居られねえって思ってた」
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