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第24話
夢だと思いたい。
彼と会ったことも、強引に組み伏せられていることも、情けない声を出していることも……全てなにかの間違いなのだと。
けど息すらまともにできない状況で現実逃避は難しく、意識は一点に向いてしまう。儚げな笑顔を浮かべ、自分に覆い被さる青年へ。
「さっき倒れたのは高熱が原因だろうけど、こっちは何があったの?」
「うあっ!」
手馴れた速さでベルトを外されたと思えば、乱暴にズボンを下ろされた。露わになった下着の膨らみを、上から指の腹で押される。
「ちょっ、と……やめろ! 鍵……部屋の鍵かけてないだろ……!」
抵抗を試みるも、柔い部分を強く押されると力が抜けてしまう。じわっとした嫌な感触が広がり、下着の中心は徐々に変色していった。
熱くてとけそうだ。熱くて寒い。震えが止まらない。
「今日は、熱……出して、変な薬飲んだら……身体がずっとおかしいんだ」
説明不足な上苦しい言い訳にしか聞こえないが、ルネは数回まばたきし、「そう」と答えた。
額に冷たい掌が触れる。気持ちよくて、そのまま眠ってしまいそうだ。
「熱はほとんど下がったみたい。次は、その薬効が切れるまで……二人で頑張ろっか」
語尾のオクターブが下がった時、嫌な予感がした。案の定的中し、絶望の底に叩き落とされる。
「んんん……っ!」
貪るような激しいキスをされ、その間にズボンごと下着を下ろされた。自分が思ってる以上にびしょ濡れだったようで、床に落ちた時に嫌な水音が聞こえた。
外気に触れて急激に寒気を感じる。けど何より耐え難いのは羞恥心だ。閉じようとした脚の間を強引にこじ開けられ、昂った性器を握られてしまった。
「すごい、ぬるぬる……滑って扱けない」
「……っ!」
自分でも分かっていたが、言葉にされると発狂しそうだった。肩を押して凄んでみるも、涙もたまっているせいであまり効果がないかもしれない。
ようやく口が離れたと思えば今度はシャツまで脱がされ、簡単に全裸にされてしまった。普段はどちらかというとマイペースでとろいのに、こういうときばかり手技を発揮する。心の底から憎かった。
「ル、ネ……ぃや……っ」
首を必死に左右に振っても逃がしてもらえない。
彼の張り詰めたものが腰にぴたりと当たる。まさか、と青ざめた瞬間、凄まじい衝撃が全身を駆け抜けた。
「あああぁっ!」
有り得ない。
信じられないことだが、彼が入ってくる。太さや長さ……の話ではなく、もっとスケールの大きい、潰されそうなほどの質量を感じている。息もできず、脚を限界まで天井に上げた。見えるのは彼の辛そうな顔と、自身のつま先だけ。
こんな時でも繋がった部分は自らの愛液で溢れている。彼が少し動く度にいやらしい音を立て、悦ぶように震えていた。
「いやっ……くそ、抜け……って」
「こんなに中が動いてるのに?」
その言葉の通り、確かに快感を覚えている。深く息をつき、ゆっくりと覆いかぶさってきた。
紫の毛先に汗が溜まり、頬に落ちる。自分も、既に汗でまみれて酷い姿だった。体液と一括りにすれば、全身がびしょ濡れだ。まるで水の中にいるように、ルネが動く度に飛沫が光る。
肌と肌がぶつかり合う音が生々しい。粘膜が接触する様も、久しぶりのせいかおぞましいぐらいだ。
彼とこうするのは何回目か……具体的な回数は全く分からない。ただ彼がどのタイミングでイクのか、それが予測できるぐらいには肌を重ねている。
「ノース、ちゃんと息を吸って……そう、ここは力を抜いて」
長い指が口腔内に差し込まれる。唾液が口の端から零れたが、拭くことすらできない。手足を放り出し、気付けば自ら腰を振っていた。
「ん、うぅ……っ」
気持ちいいなんて死んでも言いたくない。こんな姿を晒してること自体屈辱だし、本当は思いきり殴りたい。でも身体は自身のコントロールから離れ、より従順になっている。どうしたらもっと気持ちよくしてもらえるのか、そればかり考えて勝手に動いているようだった。
「あっ、あっ、ひあっ!?」
腰を掴む手に力が入り、律動が速くなる。体調が悪いというのに激しく頭を揺らされ、苦しさに身を攀じる。
滑りが良くなったぶん今まで当たらなかった壁に彼のものが食い込み、豪快に反り返ってしまう。
恥ずかしい部分はとうの昔に全て見られているけど、最後の砦だけは守りたい。そう思って彼の肩を押すが、逆に引き寄せられて激しく中を突かれる。
不意に胸の突起を甘噛みされ、甲高い声で叫んでしまった。
「ルネ……やめ、やだ、やだ……そこ擦らないで…… っ! イッちゃう、から」
「ううん、このまましよう。大丈夫だから」
いやだ……、イキたくない。“今”はもう、イクところなんて絶対見られたくない。
だけど皮肉なもので、踏ん張って力を入れるほど繋がった部分の刺激が強くなる。加えて勢いよく抜き差しされては敵わない。
「イッて、ノース」
一際強く中を抉られる。そして前を指先で弾かれた瞬間、目の前が真っ白になった。
「あああーっ」
内腿が跳ね、中心の熱がぶるんと震えた。飛び散った液体がルネの胸や下腹部まで汚していく。それも見るに堪えない光景なのに、強すぎる快感に襲われ何も考えられなかった。
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