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第47話

「ノースが時々素直になってくれるの、本当に嬉しいんだ。だから照れないで、昔みたいに甘えてほしいな」 「甘……もうそういうの、やめてもいい歳だろ」 「何言ってんのー。また二十代だよ?」 続けてルネは「ずるいよなぁ」と零した。 「ずるい? 何が?」 「普段素っ気ないから、たまに素直になるとすごく可愛く見える。ノースの方が絶対得してるよね」 「知らん。変な妬み方するな」 理不尽な物言いにムッとしつつも、何となく言ってる意味が分かった。 普段仕事しない奴が珍しく仕事した時にすごく褒められる現象だ。ちゃんとしてない奴が過大評価されるのは、誰が見ても良い気分じゃないだろう。 普通なら恋人に甘えることができるが、その普通が自分には難しい。だから時々弱さを見せると、ルネは心の底から喜ぶ。もっと寄りかかって、頼ってほしいと繰り返す。 ならそれに応えなきゃ、男がすたるよな。 「……努力するよ」 「何を?」 「お前が求める、素直ってやつ」

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