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4日目:搾精する蟲

 眼の前で、ザラキアは美しい容貌にいっそ酷薄な程の微笑を浮かべている。泣き出しそうに顔を歪めるシンジの哀願すら、彼には全く届いていない様子だった。  ザラキアの手が、掃除蟲の入っている容器とよく似た、一回り大きな陶器の容器を携えている。そこに飼われているのは、恐らく何らかの蟲の(たぐい)だろう。蓋が開かれ、ザラキアの琥珀の手の中にぞろりと広げられたのは、赤黒い粘体を持つ筒型の生物だった。掃除蟲と異なり、その表面はつるりとして柔毛や柔突起は一切生えていない。それは何で、どうされるのか、全く見当もつかずに固まるシンジの目の前で、ザラキアはフンと鼻を鳴らして(わら)った。  「そんなにイキたきゃ、空になるまでイかせてやる。──こいつは、人間の種付けに使う搾精蟲だ。お漏らしをしたお前のこれを包んで、一滴残らず搾り取る。…思う存分、たっぷり出せ。」  「さ…搾精──?…ひ、やぁ…ッ──!」  細長いイソギンチャクのような形をした軟体生物は、先端にぱかりと開く大きな口を持っていた。ぬらりと粘液で光る口の中は、内臓みたいな赤い色をした無数の細かな触手状の柔突起でびっしりと覆われ、うねうねと蠢いている。見るだけで背筋に怖気が走るほど、気色の悪い蟲だ。  その口がシンジの、恐怖で半ば萎えた牡の部分にひたりと押し当てられる。蟲はたちまち身をくねらせて、体格相応に小ぶりなシンジのモノをすっぽりと根元まで咥え込んでいった。ぞろぞろと幹全体を這い回る蟲の内側には(ひだ)があり、中は余すところなくびっしりと粘液質の柔毛で覆われている。それがざわめくように動いて、ひとつひとつが牡の器官をぬるぬるとブラッシングし始めた。  神経の集中した敏感な器官を直接包んで這い回る強烈な快感に、たちまち蟲に呑まれた部分に血が集まり、硬く勃起していくのが解る。  「や…ぁ、──なに、これ…っ──!こんなの…知らな──っ…!」  無数のぬめる突起に舐められ、吸われ、(ひだ)の中でごしゅごしゅと上下に擦られて、たちまちのうちに男としての絶頂に追い上げられた。こんな人外の快楽を我慢しろという方が、土台無理だ。背筋を大きく(たわ)ませながら、じゅるっ!と強く吸い付かれた先端からぴゅくぴゅくと精液を迸らせて絶頂する。  だが、一度精液を吐き出しただけでは、このイソギンチャクのようないやらしい蟲は満足しないらしい。かえってきつく締め込むように吸い上げ、全身を震わせる蠕動(ぜんどう)で咥え込んだ雄の器官が萎えないように絡めて扱きながら、またザワザワと分厚い襞に生えた肉のブラシを蠢かせる刺激で牡茎全体をしつこく擦り、再度の絶頂を促してくる。  「屈強な種牡奴隷の精巣がカラになるまで絞り尽くす奴だぞ。それに、そう簡単に許しちゃ、仕置きの意味がねぇ。」  「ひ…ああぁ…っ、…や…ぅ、こんなの、無理ぃ…また──イく…っ…!」  「ハハ、お前、こっちも弱々かよ。…いいぜ、悪くないから、どんどん出せ。」  柔体の中でどろどろに舐め溶かされてしまうのではないかと恐怖するほど、蟲の動きは繊細で粘っこい。敏感な裏筋や、先端や、鈴口の入口にまでびっしりと取りついた細かな触手のような柔突起が集中し、くち、くちゅ、と音を立てながら柔い肉の毛を擦り付けてくる。全身が柔軟なゴムのような筋肉で出来ているらしい蟲の身体は、パンパンに張り詰めた牡の器官をさらに高めようとしてぎゅっと引き締まり、全身を上下させながら内襞を擦りつけてぬちゅぬちゅと扱き、同時にじゅっ、じゅっ!と強く吸い上げてきた。  締め付けと上下運動、そしてざわざわとうねる細かな触手の全体責めは、女性と性行為をしたこともないシンジにとってはあまりにも強すぎる刺激だった。拘束具をガチャガチャと鳴らしながら激しく身を捩っても、搾精するためだけに存在する軟体生物は、股間に吸い付き、喰らい付いて離れない。再びぢゅぅっと容赦なく吸い上げられ、だいぶ薄く、少なくなった精液をぶるっと震えながら吐き出してしまう。  「嫌ぁあぁっ──、もう…吸ったらだめっ…!柔らかい毛…ブラシみたいにナカで動くの、キツいっ…。ぬるぬる擦るの…止めてぇ──っ!」  人外の生物が与えてくる強制絶頂は、本能的なストッパーを無視して男性器を徹底的に虐め抜く、快楽地獄と言っていい。

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