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第7話 菫②

「レオン、私は自分の人生から恋愛を締め出して、女を捨てて、仕事一筋に生きて来たの。  気付いたら60才になってた。こんな弱気な私をきっと誰も知らないわ。  レオン、お願いだから私のそばにいて頂戴。 いつでも顔が見られる所に。 もう私の前からいなくならないで。」 「菫ちゃん、」  綺麗な人だった。お金をかけているからなのか、肌もきれいでスタイルもいい。  一流のデザイナーの、プレタボルテ(既製服)ではない、オートクチュールらしい洋服を身に付けている。華美では無い、落ち着いた高級感がある。  名刺を探してかき回したバッグは多分バーキン。それも希少な象皮のオーダー品だ。注文してから数年待たされて、しかも一千万円は下らないだろう。  値は張るが、いまいち品がない。 「マスター、下品な女だと思っているでしょ。 不動産業界はハッタリの世界なのよ。  私みたいな中身は国産の日本人のおばあちゃんでも、靴やバッグ、時計なんかがものを言う時があるの。  海外ではどんな高級ホテルでも、さっとドアが開く。支配人が飛んでくる。それを取引相手が見てるから、怯んだら負け、の世界なのよ。  嫌な世界に身を置いて荒んだ私をレオンが浄化してくれる。お金には変えられないレオンの価値が貴方にわかるかしら、ね。」 「菫ちゃん、菫ちゃんが見てるのは、レオンだよ。ボクはもう礼於なんだ。  ホストのレオンはもういないんだよ。」  礼於はカウンターから出て菫ちゃんの手を握った。 「マスターがレオンの今の恋人なの? 素敵な人ね。いつもレオンと一緒にいられて羨ましいわ。また、来てもいいかしら。  私は諦めが悪いのよ。」  菫ちゃんは帰って行った。円城寺も、何か言いたそうだったが帰って行った。 「礼於、凄い惚れ込みようだね。取られそうだ。 キスしておくれ。」

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