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第8話 タトゥー

 二人の部屋に帰って来て、傑の膝に抱かれてやっと礼於は安心出来た。 「ボク怖いんだ。何も考えないで、ホストなんかやってた。あの頃は怖いものなんか無かった。失うものがなかったから。  今は違うよ。傑を無くしたら生きて行けない。」 「どうしてそんな事を思うんだ? 私はここにいるよ。」 礼於が手を握る。傑のゴツゴツした長い指。たまらなくセクシーだ。礼於は傑の全てが好きだ。ハグしていたい、ずっとこのまま。 「礼於、可愛い。」 礼於の柔らかい唇の感触。ゆっくり味わいたい。  礼於にこの上なく優しい口づけを贈る。 「傑、大好き。」 いつも離したくない。礼於の可愛らしい髪に指を入れて、抱き寄せてまたキス。肩のタトゥーに舌を這わせる。  出会った頃、突然1ヶ月ほど行方不明になった礼於。ホストクラブも無断で休み、経営者の円城寺が探し回っていた。傑も疑われたが行方は知らなかった。そして礼於が傑の元に顔を出した時、そのタトゥーが入っていた。傑への愛の証だと、右肩から手首まで綺麗な色が入っていた。  優しくタトゥーを愛撫するのはいつもの事だ。 「痛かっただろ。」 「うん、傑に捧げるものが何も無いからグレースに相談してこれにしたんだ。少し痛かった。」  ホスト時代のレオンの客のグレースは彫り師で、ギニアではシャーマンだった。グレースの家で一月ほどかけて彫ったタトゥーだった。愛の誓いが彫られているという。

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