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第9話 タトゥー②
抱きしめて傑の舌がタトゥーを探っていく。
「右手だね。腕全部だ。
利き腕だろ、大丈夫なのか?」
「もう今は全然痛くないよ。気に入ってくれた?ほら、ここに傑の瞳が彫ってあるんだ。」
肘の近くに切れ長の傑の眼があった。
「傑がいつも見てるから絶対浮気なんかしないよ。傑もなんか入れる?
浮気防止のおまじない。」
「私は他の人と浮気するなんて考えられないな。
礼於しか欲しくない。」
ギュッと抱きしめる。
「でも、礼於のために何か入れようかな。
もう礼於無しの人生は終わりだ。これからは二人で生きて行こう。礼於に誓うよ。」
「傑っ!」
傑は今までそんな思いつきで何かを決めた事はない。出会ってそんなに時間は経っていないのにいいのか?
軽はずみな事は滅多にしない傑だった。
「本気で言ってるの?嬉しいけど、あまり薦めたくはないよ。堅気で生きて行けないよ。」
「大袈裟だな。
でも、礼於の右腕に小さな龍がいるだろ。
私も龍を入れたい。」
「ボクの守り神は龍なんだ。グレースは日本の龍を良く知らなかったみたいで、説明するの大変だった。どうしても洋風のドラゴンになっちゃう。グレースは知り合いの和彫りの人から刺青の画集を借りて来たんだよ。」
傑は和彫りもいいなぁ、と思った。
綺麗だが、本当にヤクザだと思われる。
それでも和彫りには魅力があった。
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