9 / 200

第9話 タトゥー②

 抱きしめて傑の舌がタトゥーを探っていく。 「右手だね。腕全部だ。 利き腕だろ、大丈夫なのか?」 「もう今は全然痛くないよ。気に入ってくれた?ほら、ここに傑の瞳が彫ってあるんだ。」  肘の近くに切れ長の傑の眼があった。 「傑がいつも見てるから絶対浮気なんかしないよ。傑もなんか入れる? 浮気防止のおまじない。」 「私は他の人と浮気するなんて考えられないな。 礼於しか欲しくない。」 ギュッと抱きしめる。 「でも、礼於のために何か入れようかな。 もう礼於無しの人生は終わりだ。これからは二人で生きて行こう。礼於に誓うよ。」 「傑っ!」  傑は今までそんな思いつきで何かを決めた事はない。出会ってそんなに時間は経っていないのにいいのか?  軽はずみな事は滅多にしない傑だった。 「本気で言ってるの?嬉しいけど、あまり薦めたくはないよ。堅気で生きて行けないよ。」 「大袈裟だな。 でも、礼於の右腕に小さな龍がいるだろ。 私も龍を入れたい。」 「ボクの守り神は龍なんだ。グレースは日本の龍を良く知らなかったみたいで、説明するの大変だった。どうしても洋風のドラゴンになっちゃう。グレースは知り合いの和彫りの人から刺青の画集を借りて来たんだよ。」  傑は和彫りもいいなぁ、と思った。 綺麗だが、本当にヤクザだと思われる。  それでも和彫りには魅力があった。

ともだちにシェアしよう!