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第18話 龍②

 彫武はあまり饒舌ではないが、楽しんでいるようでいい雰囲気でお酒が進んだ。 「折角だから彫り物見たいな。」 礼於が言った。もちろん彫武に言っているのだ。 「いいよ。俺はどこでも脱いで見せるけど店の中で大丈夫か?」  彫り物に誇りを持っている。 シャツを脱いでなんとズボンも脱いだ。粋な下帯だけになってその見事な刺青の入った全身が露わになった。  そんなに背は高くないが、鍛えているらしく筋肉の付いたいい身体だった。 (そうか、彼にとっては、商品のプレゼンみたいなものか。) 傑は納得して綺麗な刺青を眺めた。  前身は関東彫りで見切りが細くひかえが乳首の上で弧を描いている。  両肩から手首まで、綺麗な額に囲まれて胸割りが背中に向かって風神雷神に続いている。 「傑さんのはカラス彫りでぼかしを入れてモノトーンで仕上げました。抜き彫りです。額は,なし。背景は無しで龍を際立たせました。  俺のは商品見本みたいなもので、初代彫武の渾身の作、です。色々盛り込んである。  普通はえぐりで服の外からは見えないようにするんだけど、お前は広告塔みたいなものだから、 袖も十分(じゅうぶ)の長袖、襟もえぐりなしで服から見せろ、って言って。」 えぐりは襟に合わせて絵を削る事だそうだ。はみ出さないように。奥ゆかしいのだ。彫武はあえて見えるようにえぐり無しで紋紋を見せている。  足は尻から踝まで入っている。 「何も着てなくても暖かそうだね。」 礼於が面白い事を言っている。  そこにドアを開けてミトとロジが入って来た。 裸の彫武を見てミトが 「あっ、サリナと同じだ!」 と、小さく叫んでロジを見た。ロジャーの秘書だったサリナもほぼ全身にタトゥーが入っていた。

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