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第20話 ロジとミト
グレースと彫武が帰った。広尾はこの店からも割と近い。
「これからも度々寄せて貰います。
俺、シングルモルト好きなんで。」
「カクテル、美味しかったわ。品揃えがいいわね。ノイリーがあるなんて感激よ。
ベルモットはチンザノくらいしか置いてないところがほとんどなのよ。」
グレースも彫武も、また来る、と言って帰って行った。
ロジとミトが「バー高任」に来るのは珍しい。
「ロジャー先生、今日は大学にご用でしたか?
ウチの店に来るのは珍しいですね。」
ロジの大学は「バー高任」から割と近い。
傑の声かけに
「大学に所用もあったし、ミトの友達の尊って言う学生にも用事があってね。」
「ああ、尊君なら私も知ってますよ。
レイモンの嫁さんですよね。」
「そうか、君はあの倶楽部の事もよく知ってるんだったな。
みんなが傑と礼於の顔を見たいって言ってたぞ。二人一緒の所を。」
それで簡単な披露パーティーをやろうという話が出ているそうだ。小鉄が張り切っているらしい。
ついでにロジとミトのカップルや、ハジメとタカヒロ、小鉄とジョー、傑と礼於のそれぞれをお披露目したいという声が出ている。
あの、「奥の御老人」達からの要望でもあるらしい。
尊と沼田レイモンのカップルにも声がかかった。
ミトが礼於のそばに来て
「礼於、僕、もっと礼於と仲良くなりたい。
キスして。」
「えっ?」
ロジが笑っている。ミトにはいつもの事だ。
「二人が並んでいると、美しくて眼が眩むな。」
確かに美しい二人だった。
ミトの方が僅かに背が低いのだが、礼於を抱きしめて口づけをした。
「礼於を取られそうだ。」
傑が笑いながら言った。
「ウチの方にも来てくれ。一緒に飯でも食おう。
小鉄とも披露の話を詰めるよ。」
ロジ達の家は北関東にある。九十九里より北だ。これから帰るのはちょっと遠い。ロジは酒を全く飲まないので運転は苦にならないようだ。
「じゃあね、礼於、今度セックスしよう。」
「えっ?えっ?」
「ミトの笑えない冗談だな。」
ミトの肩を大切そうに抱いてロジは帰って行った。
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