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第28話 奥の老人

「ホストをやってたのかい?」 「はい、でも円満退社しました。寿退社です。 傑と添い遂げるので。」 「おお、いい根性だの。可愛いな、礼於君。 何かあったらこのおじじ達が、味方だよ。 可愛い傑の嫁だからな。」 「ありがとう、おじいちゃん達。」 「おいおい、何言ってるんだよ。」 傑は慌てた。おじいちゃんと呼ぶなんて畏れ多い 「いいからいいから。 ロジャーの所のミトも、儂らのことはおじいちゃんと呼ぶぞ。礼於もおじいちゃん、でいいよ。」  目を細めて孫を見るように言うご老人達に、傑は恐縮して固まっている。 「パーテーをやろう。いつがいいかな?」 「パーテー?あ、パーティーか。 いいな、楽しそう!」  ここはいつもパーティーみたいな空間だが、また一つイベントの口実が出来たようなものだ。 「披露目をやろう。小鉄も身を固めたそうだの。 小鉄に仕切らせよう。追って連絡が行くだろう。」 「ありがとうございます。」 「儂らは、賑やかな事が好きなんだよ。」 「ああ、昔から岩戸の前で騒いでアマテラスを引っ張り出したりしたからの。」 「は?ちょっと何言ってるかわからないよ。 でも面白いおじいちゃんたちだ。」  礼於が小さな声で 「傑、認知症ってあんな感じ?」 「あー、ダメだよ。あの方たちはボケてないよ。 むしろ、鋭い。シャープな頭脳をお持ちだ。 耳だっていいよ、聞こえてるぞ。」 「えー?ごめんね、おじいちゃん達。」  聞こえるはずもない,奥のVIP席に向かって謝る。礼於がまた一段と可愛くなっている。  肩を抱いて歩いて帰って来た。都会の夜道を歩くのも気持ちがいい。有栖川公園を散歩しながら帰った。

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