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第33話 藤尾集蔵
珍しく傑がどこかに電話をかけている。しばらくして、あの藤尾さんが来た。
いつもは下駄履きで気楽な格好で来る藤尾さんが、今日は黒いスーツを決めている。只者ではない貫禄だ。礼於が気付いて
「いらっしゃい。藤尾さん、カッコいいですね。
今日は何かあるんですか?」
「おお、礼於、相変わらずいい男だな。
傑に呼ばれたんだよ。」
傑と藤尾が話をしている。
「そうか、そんな事があったのか。」
「礼於が世話になっていた店ですから、何とかしてやりたいんですが、横からおせっかいか?とも思って。」
「ご老人から聞いたよ。円城寺って奴は、俺もこの店で見た事があるな。」
「ああ、そうです。人相の悪いのを二人連れて来た。あの時、藤尾さんもいらしてた。」
「根は悪い奴じゃなさそうだな。」
藤尾さんは
「ちょっと、ディアボラの様子を見に行こう。
店、閉めて大丈夫か?」
「あ、はい。礼於も行こう。」
傑が店に置いてあるスーツに着替えた。
「ボクのも置いてあるからスーツ着たよ。
久しぶりだ。男の戦闘服だね。
ボク菫ちゃんに連絡してみる。日本にいるかな?」
久しぶりのディアボラはなんだか荒んだ気配がした。いつもゴージャスな盛花が活けてあったエントランスに今は花は無かった。埃っぽいレセプション。レジの女性もいない。辞めてしまったらしい。度重なる給料の遅配で頼れるスタッフはもう残っていないようだ。
淳が来て、席に案内してくれた。店内はガラガラで空席ばかりだ。
入り口近くにホストらしき人が4.5人居る。お茶を挽いてる感が凄い。不景気な顔。
ボクと傑と藤尾さん、それに藤尾さんのベンツを運転してきた深谷さんの4人で来た。深谷さんは頑丈そうなデカい身体で、運転手も兼ねているが、藤尾さんのボディガードが本職のようだ。
淳と零士が席についてくれた。
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