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第35話 菫ちゃん

「レオンがいなくなって、めっきりお客が減った。どうだい、もう一度働かないか?」  また言っている。まるでお客さんが減ったのは礼於のせい、みたいな言い草だ。 「円城寺さん、菫ちゃんが来るって。 今日は日本にいた!」  スマホを持って、礼於が嬉しそうだった。 「礼於の古巣なんだな。じゃあみんなにご馳走しよう。向こうにいるスタッフにも声かけて、何でも好きなものを飲んでくれ。」  藤尾さんは太っ腹だ。 「いらっしゃいませ。」 嬉しそうな円城寺の声にみんなが入り口を見ると、ニコニコして菫ちゃんが入ってきた。 「菫ちゃん、忙しいのに来てくれたんだね。」 「ええ、ちょうど良かった。ビジネスの話もあったの。みんなに聞いてもらいたかったから。」 「藤尾さん、こちら上条不動産の上条社長。 菫さん、こちら藤尾さん。ご存知でしたか?」 傑が紹介した。 「もちろんお名前は存じ上げておりますわ。 東京で藤尾さんを知らなければ事業は出来ない。 お会いするのは初めてね。」  藤尾さんは笑いながら、 「菫、俺の事忘れたのか? 集蔵だよ。幼稚園一緒だったろ。育った家が近所だった。よく一緒に遊んだよな。お医者さんごっこ、とか。おまえ,すげぇお転婆で。」 「えっ?集ちゃん? うそ!藤尾さんと言えば,日本の経済界のフィクサーよ。うちの父なら知ってたかしらね。 あの、藤尾さんが集ちゃんなんだ?」 「日本は狭いな。箱庭か。」 経済界の大物が邂逅した。 「俺はただの、奥のご老人の使いっ走りだよ。」 「奥のご老人をご存知なのね。今度紹介して欲しいわ。」 「ああ、今度面白い倶楽部に連れて行ってやるよ。」

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