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第36話 計画
傑は、菫ちゃんにも、藤尾さんに電話で話した事を説明した。
ディアボラの現状を前から心配していた菫ちゃんは、また、違った角度から対策を練っていた。
実行に移す時は今だ、と思っている。
「私もシェリー飲みたい。礼於、そのボトル、分けて。」
礼於が菫ちゃんのフルートグラスにティオペペを注いだ。
「実はね、ある計画を進めているのよ。」
円城寺を呼んだ。
「円城寺さん、この店のあるこのビルは、上条不動産で買い取ったのよ。一等地にある、築浅の優良物件だから、うちの営業が交渉してたの。
一棟丸ごと、上条不動産の持ちビルになった。
あなた、この店の賃貸料、もう6ヶ月も払い込まれてないわ。3ヶ月払わないと、あなたに権利が無くなる契約だったわね。」
「ああ、そ、それは。
ちょっと忙しくて忘れてただけだ。すぐ、振り込むよ。」
「ご心配はいらないわ。もうこの店のオーナーはあなたじゃないの。家賃の心配はいらないわ。」
「だ,誰が権利を買ったんだ?」
みんな驚いている。
「私がオーナー。
円城寺さん、あなたは今から上条ホールディングスの系列会社の、新しく開拓する飲食部の社長をやらないかしら。初めて飲食に進出するのよ。
私にとっても初めての分野。無謀な冒険よ。
あなたを見込んでの事よ。本当は取締役会で決を取らなくちゃいけないんだけど、暫定的にあなたにお願いするわ。この店を一番よく知ってるのはあなたですもの。」
菫ちゃんは、円城寺側が丸々有利な条件を出して来た。普通、こんな上手い話はない。
藤尾は、その女とは思えない大英断に、驚きを隠せない。
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