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第43話 ゲイ

 礼於はいつも前向きに生きてきた。立ち止まったら潰される。まわりはみんな礼於を狙っている。足を引っ張ってくる奴。弱みを見せたら終わりだ。何故かいつも競争の中に置かれる。  気が付けば子供の頃からだった。石崎家の待望の子供。女優だった母は中々子供ができず、嫁として身の縮む思いだったそうだ。  石崎家は地方の旧家。何故か、従姉妹たちも女の子ばかり生まれる家系で初めての男だった。 「母さんは何で泣いてるの? ボクが守ってあげるよ。だから泣かないで。」  そんな事を約束したのに母は礼於が小さい時に病気で死んだ。病弱な母は礼於一人産むのが精一杯だった。 「子供なんか作らなければ、生きられたかもしれない。」 と父には責められて育った。 (大人はみんな自分勝手だ。)  それでもたった一人の後継ぎだと、祖父母には溺愛されて育った。そしてその分、従姉妹達からはいじめられた。母譲りの美貌が原因だったか?  父に愛されたい、と言うのが母亡き後の礼於の願いだった。  父はほとんど家に居なかった。地主で不動産収入で遊んで暮らせる。外に愛人を作って家に居つかない父だった。  大人になっても、父親のような存在を求めてしまう。父に認められたい、許されたい、でも一体何を?  そんな礼於がゲイになるのは必然だったかもしれない。

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