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第44話 礼於の過去

 もう高校生の頃には六本木で遊んでいた。 美しい顔。みんな放って置かない。  ほとんど家に帰らない生活で、小遣い稼ぎにホストクラブに誘われた。17才だった。20才だと嘘をついた。  ディアボラ、円城寺の店だ。初めて勤めた店が一流店だったのは、礼於にとってラッキーな事だった。  礼儀作法や接客など、実戦でどんな学校よりも役にたつ様々なことを学んだ。  上条不動産の菫社長に気に入られ、店でも売り上げナンバーワンにのし上がった。  本人は、のし上がったなんていう気持ちはないのだが、円城寺の後ろ盾でいつのまにかナンバーワンになっていた。  いつもそう。人を押しのけて上に行きたいなどと思ったことはないのに、こうなる。  その頃決まった住まいは無く、円城寺のマンションに居候していた。円城寺が全て準備した。全て円城寺の思い通りにされていた。  とうとうあの夜、円城寺に犯された。 男との経験が初めてのセックスだったのは、少し悲しかった。 「美しい顔だ。芸術品だな。」 顎を掴まれ顔を覗かれる。 (嫌な奴。触るなよ。) いつもそんな事を思っていても面と向かって言えない。円城寺は執拗に身体を求める。嫌なのに身体は反応する。 (もう、ボクは汚れてしまったんだなぁ。 もう誰にも大切にしてもらえないんだ。 こんな男の、おもちゃになるしかないんだ。) 投げやりな生き方が、冷たそうで素敵に見えるって。小悪魔だって、客に喜ばれる。

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