44 / 200
第44話 礼於の過去
もう高校生の頃には六本木で遊んでいた。
美しい顔。みんな放って置かない。
ほとんど家に帰らない生活で、小遣い稼ぎにホストクラブに誘われた。17才だった。20才だと嘘をついた。
ディアボラ、円城寺の店だ。初めて勤めた店が一流店だったのは、礼於にとってラッキーな事だった。
礼儀作法や接客など、実戦でどんな学校よりも役にたつ様々なことを学んだ。
上条不動産の菫社長に気に入られ、店でも売り上げナンバーワンにのし上がった。
本人は、のし上がったなんていう気持ちはないのだが、円城寺の後ろ盾でいつのまにかナンバーワンになっていた。
いつもそう。人を押しのけて上に行きたいなどと思ったことはないのに、こうなる。
その頃決まった住まいは無く、円城寺のマンションに居候していた。円城寺が全て準備した。全て円城寺の思い通りにされていた。
とうとうあの夜、円城寺に犯された。
男との経験が初めてのセックスだったのは、少し悲しかった。
「美しい顔だ。芸術品だな。」
顎を掴まれ顔を覗かれる。
(嫌な奴。触るなよ。)
いつもそんな事を思っていても面と向かって言えない。円城寺は執拗に身体を求める。嫌なのに身体は反応する。
(もう、ボクは汚れてしまったんだなぁ。
もう誰にも大切にしてもらえないんだ。
こんな男の、おもちゃになるしかないんだ。)
投げやりな生き方が、冷たそうで素敵に見えるって。小悪魔だって、客に喜ばれる。
ともだちにシェアしよう!