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第46話 一目惚れ

 時々悪夢にうなされる。お客さんとセックスする仕事ではない。そんな事を望むお客さんはいない。ディアボラは上品なサロンなのだ。  下卑た事を望むのは円城寺だけだ。 「レオンを愛しているんだよ。」 (嘘だ。こんなケダモノみたいなの、愛なんかじゃない。) いつも心の中で叫んでいた。  それでも一筋の光を見つけた。 六本木から少し歩いてお屋敷町のはずれにある、一軒のバー。その店のマスターに一目惚れだった。一目惚れなんて言うのも失礼な、何か神々しいマスターがいた。お地蔵様に似てる?  「バー高任」運命を感じた。 「いらっしゃい。お一人ですか?」  高任傑。マスターの名前が営業許可証に書かれて奥に掛けてあった。 「マスター、傑っていう名前なの?」 「ああ、そうか。許可証を見たんだね。そうだよ。じゃあ、あなたは?」 「レオン。ディアボラって知ってる?ボクあそこのホストなんだ。」  この店はウヰスキーがおすすめらしいから、カッコつけて飲んでみた。スコッチのシングルモルト。 「どう?癖が強いでしょ。 他にも,カクテルとかあるよ。」 礼於は意外と酒は強い。そういう体質なのだろう。シングルモルトをカッコつけて飲んで帰って来た。  傑が忘れられない。 (傑はノンケかなぁ。ボクなんかには興味ないかな。お仕事で、話し相手になってくれただけなんだよね。)  それでもディアボラが終わると、バー高任、に通った。  円城寺から逃げるためでもあった。お客さんと食事に行く、と言えば離してもらえたから。  すぐる、と心の中で呼んでいる。 (ボクだけのすぐる、だよ。あーあ、抱きしめてもらいたい。もう円城寺には指一本触れられたくない。)  足繁く「バー高任」に通った。そしてあの日。 酔い潰れて傑の部屋に泊まった。  半分くらいはわざと酔っ払ったけど、もう元の生活には戻りたく無かった。  傑の匂いを知ってしまったから。

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