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第53話 藤尾さん

「おいっ!テメエーっ、何処のもんだ?」 その男はいきなり藤尾さんに切り付けてきた。深谷が盾になって刺された。 「あっ!」 深谷はその男を押さえつけて脇腹を手で押さえている。 「大丈夫か?刺されたな。」 「浅いです。出血が多いけど、大した事はないと思います。」 救急車も、呼ばず、手で押さえただけで、その男を掴み上げた。凄い力だ。  深谷の鬼の形相に,刺した男は震え上がった。 藤尾さんは,その時 (いい男だなぁ、深谷、惚れ惚れする。) と不謹慎な事を考えていた。 「大丈夫ならウチに連れて行こう。 聞き出したい事もある。 病院じゃ、逆に口を塞がれてしまう。」  敵の多い藤尾さんの咄嗟の判断だった。  出血を押さえて深谷は 「もう、血も止まりそうです。 自分は大丈夫です。こいつ慣れてないですよ。 プロじゃない。刃物の扱いがメチャクチャだ。 自分の手を切っている。」  深谷が自分の手当てと一緒に相手のケガもみて止血している。よく見ればまだ子供だ。 「おい、おまえ、どこのもんだ? 誰に言われて来た?」  子供は怯えた目をして,こっちを見ていたが口を開いた。 「オレ、そのおっさん、殺して来いって言われたんだ。兄さん,あんたじゃない。」 「おまえ、年はいくつだ?」 「うるせぇ、」 それっきり、そのガキは口を聞かなくなった

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