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第54話 傭兵
脇腹を刺されたらしい深谷のシャツを脱がせて傷を見ている。筋肉のついた頑強な身体には、何かの傷がたくさん付いている。かなり古そうな傷だ。新しい刺し傷はそんなに深くない。
「凄いな,この傷。格闘技やってたってこんな傷は付かないだろ。深谷、おまえ一体何者だ?」
「いえ、履歴書に書いた通りですよ。」
「確か海外に長くいたって事だったな。
どこだ?」
「アフガンに数年。それとカンボジアにも。
傭兵でした。」
「ああ、それでか。確かに肝が座ってるな。
伯父貴に紹介された時は、ただの運転手兼ボディガードって事だった。身元は確かだ、と言ってたが。」
「そう言う藤尾さんも、刃物持った相手に落ち着いていましたね。さすがです。」
「どれ、刺された所見せてみろ。」
藤尾さんに肩を抱き寄せられた。
(何だ,これ?気持ちいい。)
深谷は自分の感情に戸惑った。
藤尾さんが、大げさに腕を回して包帯を巻いた。
「おい、おまえは絆創膏でいいのか?」
さっきから押し黙っている少年に声を掛けた。
本当に少年というにふさわしい、まだ子供だ。
「年はいくつなんだ?」
身体は大きいが幼さの残る顔だ。
「15。」
「ほう、声は出るんだな。
アフガンなら15才は立派な兵士だぞ。
銃を持ってた。包丁じゃなくて、な。」
深谷の一言に少年は泣き出した。
「警察に突き出すの?」
「それはどうかな。」
「ここで、拷問されるより、警察のほうがマシかな?おっさんたち、俺のこと、殴るの?」
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