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第55話 ビール

「ほう、殴られ慣れてるってか。 帰る所はあるのか? このまま無罪放免とは行かないなぁ。  わかるだろ。 俺を殺さないと帰れないんじゃないのか?」 「じゃあ、おっさん、俺に殺されてくれるの?」 深谷が慌てて、 「この野郎!調子に乗ってんじゃねぇぞ。 本当ならお前が東京湾に沈んでる所だ。」 「まあまあ、こう言う時は飯でも食おう。 深谷、何か食えるか?腹刺されてるけど。」 「この程度で、飯食えなかったらアフガンじゃ死んでますよ。確かに腹減ったなぁ。」 「よし、俺が何か作ろう。」 藤尾さんは料理好きだが腕前の方は微妙だ。  それでも大量のパスタが茹であがった。豪快な男の料理だ。パスタソースは藤尾さんお得意のトマトクリームだ。  鍋にニンニクとタマネギ、ベーコンを炒めて、ブイヨンのキューブをいくつか放り込む。トマト缶と、チーズを2.3種類、生クリームを豪快に入れて、火が通ったら出来上がりだ。チーズはパルミジャーノの塊を大雑把に削る。  大皿に盛られた大量のパスタを、各自好きなだけ、皿に取って食べる。  少年にはコーラ、大人にはビールを出した。 「オレ運転がありますからコーラで。」 「馬鹿野郎、その身体で運転するって? 今日はここに泊まって行け。 痛まないか?ビール飲まない方がいいか?」 「いえ、そんなお気遣いは、いりません。大丈夫です。ビール頂きます。」  ケガも気にせず、パスタを食らい、ビールを飲む。深谷の男っぽさが眩しく感じた。

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