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第58話 土方さん

 ほとぼりが冷めるまで大人しくしていたが、金がなくなってまた繁華街に戻ってきた。ホストくらいは出来るか、と思ったが店にピンハネされるホストより、店を経営する方が儲かる事に気がついた。でも、資金もコネもない。  風の噂に、あの土方さんがまたスカウトのような事をやっていると聞いた。 「生きてたのか!」 「おう、お前たちはまたホストに戻ったのか?」 「ああ、土方さん、なんかうまい商売はないですかね。」  彼は、ここに集まってくる家出女を騙して、売掛で縛って風俗に沈めろ、と言った。 「この辺のガキ、金持ってないですよ。」 「馬鹿野郎、金は作るんだよ。 作らせろ、女はいくらでも金になる。 馬鹿野郎がいるだろうよ。」  売掛、というのを知った。 やってる事は今までとたいして変わらないが。 「ホストに貢がせて、風俗で稼がせる。 世の中、循環してるんだよ。 それが自由主義経済ってもんだ。  この辺仕切ってる人に挨拶通してもらおうか。 商売したいんだろ。 女の子引っ掛けるのは商売だからな。」  土方さんの息のかかったホストクラブで働く事になった。  今までの店と代わりばえしない貧乏くさい店でも,持ち前の口のうまさと顔の良さで結構稼げた。土方さんの顔を立てて、シノギが出来たと思っていた。土方さんの顔で組関係が守ってくれている、と勘違いしていた。  実際、周りでは、半グレとか、チャイマのガキに刺されたり,と言うのは日常茶飯事だったから。

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