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第59話 死んだ目
貧しい外国人たちの置かれている状況は過酷だった。身内を売って売春させたり、ヤクの運び屋が10才くらいの子供だったり。
チャイマと言われる暴力的な半グレ集団に、彼らは子供の時から、ドップリ浸かって育つ。チャイニーズマフィア。親が極道ならその子供にも極道の道しかない。
チャイニーズマフィアと言っても中国人だけで組織されているわけでは無いらしい。もちろん中国本土にはデカい組織があり、世界中に広がっているのだろう。取り敢えず新宿の話だ。
日本は、金持ちの外国人旅行者は大好きだが、
貧しい国から来て、更に貧しさのために真面目に働こうとする外国人には冷たい。
「チャイマの奴等も、ガキの代になるともう目が違う。」
アメリカのケンジントンにいた事のあるホームレスが言っていた。
「ケンジントンは巨大な、ヤク中の溜まり場だ。
貨物列車の線路沿いにポンプや針、加熱用の道具がたくさん落ちている。うっかり踏んづけるとヤバいよ。あらゆる病気の巣だ。
そこにいるガキの目、だ。ゾッとするような、絶望の目。
チャイマのガキの中にもそんなのが増えている。彼らは人を殺す事に躊躇いが無いらしい。
日本人の置かれている状況はまだマシだと言われていた。
「あたしは、自分のために稼いでるの。
ホストの星夜(せいや)に貢ぐため。」
星夜というのはこの辺で有名な売れっ子ホストだ。彼女は自分の意思で自分のために金を稼ぐ事にプライドを持っている。
そんな彼女たちは、家族を養うために売春する外国人を馬鹿にする。根拠のない優越感。
人間の性(さが)なのか。少しでも上に立ちたい、とマウントを取る。
底辺でも更に下を探してしまう。悲しいものだ。 疑似恋愛に縋ってホストに貢ぐ。
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