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第70話 不穏

「李さん、わざわざありがとう。」 老人は李の腕を掴んで 「ところで、今日はウチの藤尾の祝言でもある。 嫁の深谷がこの前,怪我をしてのぅ。  やっと治ったんじゃが、お前さんの所には随分荒っぽいのがいるようじゃの。」  李は真っ青になった。 「私の目が行き届かなくて謝るヨ。 落とし前付けさせてもらうワ。」 「待て待て今日は祝いの席じゃ。 藤尾の事務所にエンコなんか届けるんじゃないぞ。」 「指じゃ足らないネ。片腕で勘弁ネ。 命までは取らないヨ。後始末が大変ネ。」 「バカもの!この祝いの席でなんという事を。」 黒服が急いで駆け寄る。 「ご老人はそんな事、お喜びになりませんよ。 祝言で血を流すのは御法度です。」 李の周りも屈強な中国人らしきボディガードが取り囲んだ。  みんな懐に片腕を突っ込んでいる。ホルスターに銃が見える。 「李さん、この頃は中国では,子供に躾しないのかい?みっともない物をめでたい席に、持ち込むんじゃないよ。」  ご老人の言い方は穏やかだが、有無を言わさぬ威厳があった。  大分、お怒りのようだ。  それでも大体は穏やかに進んだ。 傑の関係の酒屋が用意した珍しい酒やワインも揃っている。バーテンダー仲間が、カクテルを作ってくれる。みんな楽しそうだ。  デザートのワゴンが来た。目の前でフランベされて炎を上げたケーキが目を引く。  白薔薇のお嬢さんたちも、ディアボラのホスト達と盛り上がっている。

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