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第72話 サリナ

「はぁーっ、間に合った?ロジャー先生、ミト! みなさんおめでとうございます。」  息を切らせてサリナが来た。双子の可愛い子供を連れている。スパダリの國士(くにお)がエスコートしている。 「わぁ、サリナ、國士!」 ミトが抱きついた。サリナはロジの秘書だった。その前は大学でロジの学生だった。  性に奔放で、ロジ公認でミトの筆おろしをした女性だ。元々ロジの秘書兼セフレだった。  全身に素晴らしいタトゥーが入っている。藤田コンツェルンの次期社長の國士と結婚して、双子を産んだ。 「可愛い双子!」 「そう、美々子と奈々子だよ。やっと2才になったの。ミトに挨拶して。」  サリナのドレスを掴んではにかんでいるのは美々子か。奈々子はロジに抱っこされてケロッとしている。 國士が 「ロジャー先生、おめでとうございます。 その節は双子の誕生祝いをお気遣いいただき、ありがとうございました。  ミトちゃんと遂にゴールインですね。」 「ロジ、子供抱っこするの似合うね。」 ミトが寂しそうに言った。ロジは小さい子供が大好きなのだ。  ロジは慌てて、奈々子を國士に返して、ミトを抱きしめた。 「ミト、寂しい顔は無しだよ。愛してる。」 ミトは恥ずかしいのに涙がこぼれてしまった。 タカと礼於が気づいてミトをハグする。 (双子は可愛いのに、悲しくなるのはなぜ?) わかっている。自分は一生ロジに子供を与えられない。これが限界。幸せの絶頂のはずなのに明日が見えないような気持ちになる。 普通の結婚のフリをしても、これは違う。そんな気持ちになってしまった。いくら愛しても自分達は普通じゃない。そんな気持ちになってしまった。

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