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第73話 それぞれの立場
白薔薇さんたちが美々子と奈々子を見て
「可愛い、可愛い!」
と、キャーキャー騒いでいる。主役をすっかり持っていかれた。子供と動物には勝てない、という事だ。
カップルたちも、知り合いの来客に囲まれて、それぞれ挨拶に忙しそうだ。
レイモンはあの倶楽部のサディストファンや、出版関係者に囲まれて尊を紹介している。
「先生,プライベートでもサドなんですか?」
「冗談じゃない。蝶のように花のように大切に愛しているよ。」
尊の肩を抱き寄せた。みんな今日はラブラブカップルに当てられっぱなしだ。
藤尾さんの周りには、裏社会の人間の代表のような顔ぶれが集まって異様な空気だ。
「深谷、じゃなかったな、姐さんか?
藤尾さんをゲイにしちまったんだな。」
ドスの効いた声は新宿桜会の、佐倉組長代行の片桐さんだった。
「今日はご足労かけてすまないな。
名都は天下晴れて俺の嫁になった。
でも、俺のボディガードは変わらない。以前より親密に身の回りの警護をしてくれるだろう。
一つ、名都共々よろしく頼みます。」
「ははは、付かず離れず24時間、警護してくれるんだな。」
藤尾さんが赤くなっている。
「佐倉組長ももうすぐ出所だから、祝いはその後で、と言っていたよ。
取り敢えずおめでとう。」
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