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第75話 マダムセキグチ

「レオン、結婚したって?それも男と?」 ホスト時代のお客さんだった女性が声をかけてきた。菫ちゃんの紹介で店に来てくれた『マダムセキグチ』の関口麗華社長だ。  今日の豪華な料理も彼女の采配だ。元々料理好きだった関口社長が、真面目に心を込めて調理した数々ののメニューが評判を呼んだ。一念発起パリに修行に行って、今の『マダムセキグチ』がある。その料理センスは食べる人の舌と心を鷲掴みにする。  ホスト時代のレオンには、菫ちゃんの顔で、女性経営者協会の太客がたくさんいた。彼女たちはレオンを連れて歩きたがった。その美貌を見せびらかすのが快感だと言っていた。  レオンは彼女たちに贅沢を教えられた。身の程知らずな場、にも物おじせず、堂々と自然に振る舞える。育ちの良さだろうか。何処に連れて行っても恥ずかしくない、若くても紳士なのが彼女たちの心を掴んだ。  最初はホストクラブに来る女性は、みんな飢えた女だ、と円城寺に吹き込まれていたから、怖い人たちだと思ったが,実際は、余裕と品位のある女性たちだった。そうでなければ事業など出来ないだろう。円城寺は嘘の多い人間だ、と後から知る。 「レオン、いえ、今は本名ね。なんて言うの? 礼於、か。」  関口社長は礼於のほほを両手で触って、 「そう、幸せなのね。良かった。 あなたは、心も顔も綺麗だわ。歌ったり、笑ったり、見てるだけで楽しかったのよ。」 「麗華さん、ボクの彼は、麻布でバーをやってます。ボクも手伝ってるから遊びに来て下さい。」 傑が来た。 「初めまして。高任傑と言います。 今まで礼於を支えて下さって感謝します。 今後ともよろしくお願いいたします。」 「素敵な人ね。 おめでとうレオン、いいえ、礼於。」

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