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第83話 ジェロニモ

 傑はあの潮の匂いと孤独だった青春を思い出した。礼於が心配そうに顔を覗き込む。  礼於の肩を抱き寄せて 「昔の事を思い出したんだ。つらい思い出じゃないよ。ウヰスキー作りを手伝っていた頃のことだ。いつか、礼於とアイラ島に行こう。」 頬に口づけた。  チモがハジメに 「従兄弟さんはイギリスに行って、ハジメはインドに行ったわけだ。」 「チモは、ジェロが死んだ後、足跡を辿ってネパールに行ったんだろう?」 「そう、兄貴が死んで、俺は大学を辞めて、ネパールに行った。  親は後始末に奔走していたが、俺は兄貴が何を考えていたのか知りたかった。」  ハジメがジェロニモを死に追いやったのかと思ったそうだ。 「ハジメを憎んでいたよ。兄貴を殺した奴だ、って。」  裏NGOのマコチンとメドウズにサルベージされたハジメは抜け殻のようになって日本に帰って来た。  遡って、ハジメの学生の頃。 高校生の頃まではいつも従兄弟の傑とつるんでいた。二人揃えば敵はいなかった。傑と離れるのは初めてだった。外語大の学生になった。  自分でも持て余す普通ではない(?)性癖。男しか愛せない。傑も同じ気持ちでいることに気づいていたが、お互いに強い意志で抑えた。暗い気持ちで学生生活を送っていた。  そしてジェロニモとの衝撃的な出会い。ジェロニモは自由な人だった。初めて男に抱かれた。 性体験も初めて。ジェロニモに夢中になった。

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