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第95話 ミカド

 ミカドと一緒に来た男はなかなか美男子だ。でも、一癖も二癖もある、堅気じゃなさそうだ。 円城寺と同じ匂いがする。 「お嫁ちゃん、名前教えて。」 「礼於、です。ミカドさんとおっしゃるんですか?」 「そうよ、レオちゃん。天下のミカド。 ご大層な名前でしょ。傑の元愛人よ。」 平気で嘘をつく。 「わがままなミカドだ。夜の街に君臨している。」 偽円城寺が言った。 「ミカドさん、こちらの方は?」 「飛鳥コーポレーションの寺田飛鳥さんよ。 聞いた事くらいあるかしら。」  飛鳥コーポレーションはいわゆる芸能事務所だ。まあまあ売れている芸能人を何人か抱えている。枕営業疑惑がマスコミで騒がれている。 「寺ちゃん、可愛いでしょ、この子。 この店のマスターのお嫁ちゃんなのよ。 ゲイなのよね。」 「ほう、俺と気が合うなぁ。ミカドからこの子に乗り換えようかな。」 「バカねぇ、お嫁ちゃんだってば。」 「俺は全然気にしない。 マスター、一晩くらい構わないだろう?」 傑の顔色が変わった。礼於が抑える。 「寺田さんとおっしゃいましたか? 芸能事務所を経営なさってる? ミカドさんと同業の方を抱えてるんですね。 !!とっとと帰れよ、この女衒野郎!」 水差しの水を頭からぶっかけた。 「なんだこの野郎!オカマのくせに生意気なんだよ。カマ野郎は世の中の隅の方で小さくなってろ。」  そこに藤尾さんと名都が絶好のタイミングで入って来た。 「なんだ、床が水浸しだ。」 「礼於、モップ貸して。」 名都が掃除を始めた。 「なんかオカマ、オカマ聞こえたんだが。」 ドスの効いた声で藤尾さんが言った。

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