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第97話 藤尾さん

「拐うか?」 事務所に拐われたらよほどの事がないかぎり、命の保証はない、と言う事だ。 「藤尾さんが手を汚す事、無いですよ。」 名都の声で、ミカドが藤尾さんの正体に気付いた。バックにはあのご老人がいる。 「寺ちゃん、帰ろう。相手が悪すぎる。商売出来なくなる。下手したら生きていけなくなる。 マスターお会計!」 名都が 「高くつきますよ。藤尾さんを怒らせた。」 「あんたは黙ってて! 寺ちゃんが声かければ、あんたなんか捻り潰せる奴をいっぱい知ってるんだから。たかがボディガードふぜいが。」  ミカドは藤尾さんの名前を知っているだけだ。その、本当の正体を知らない。知らない方がいいかもしれないが。 「クリーニング代、お支払いしますよ。」 傑の声に、ミカドと寺田は 「いらねぇよっ!」 捨て台詞を残して帰って行った。 礼於が塩を撒いた。 「すみません。藤尾さん、名都さん。 せっかくの宵にアヤがつきました。 一杯ご馳走させてください。何がいいですか?」 「じゃあ、シングルモルトを貰おうか。 ラフロイグをロックで。」  傑は、ロックには、氷を専用の包丁で削る。貫目氷をアイスピックで八つに割り、その一つの立方体の角をそれぞれ落としてダイヤカットにする。丸氷より光の当たり方が綺麗だ。この削り方が好きなのだ。  それをロックグラスにラフロイグと共に入れる。ラフロイグは、アイラモルトで一番知名度の高いウヰスキーだ。置いている店は多い。 名都の前にはコーラが置かれた。運転がある。  寺田は小物だが、チンピラのコネは多い。最近のさばってきたチャイマに話を持って行った。

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