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第100話 傑と礼於
帰って来て、さっきから礼於が無口だ。
「どうした?ここにおいで。」
傑に抱きとられて定位置の膝に乗る。
「傑はボクと出会う前、誰か愛人がいたの?
遊びの付き合いしかないって言ってたけど。
二度目はないって。」
「そうだよ、みんなプロだった。お金が解決する付き合いだけだ。」
「でも、ミカドさんは傑の愛人だったって。」
礼於の頬を両手で挟んで口づけする。
「嘘を吐くのが彼の仕事だよ。
可愛いなぁ、それでふくれてたのか?
なんか嬉しいぞ、礼於がヤキモチ妬いてくれた。」
「だって傑が誰かに夢中になるなんて、考えただけで胸が締め付けられる。過ぎた事なのに、ボクはガキだね。」
「誰かに夢中になったのは、礼於が初めてだよ。可愛い可愛い。」
傑の髪を触りながら
「こんな風に傑を触った人が他にもいたらやだなぁ。そんな妄想が頭から離れない。」
きっとこんな事もあんな事も他の誰かとしたんだ。礼於は両手で顔を覆ってしまった。
「私は年の割に普通の恋愛経験が少ない。
未熟な人間かもしれない。もっと手練れが良かったかな?礼於につまらない人だ、と思われたくない。いろんな人と恋をした方がいいのか?」
「ひどいよ、全く反対の事を言ってる。
ミカドさんはやっぱり、上手なの?」
礼於が可愛くて仕方がない傑は、思わず笑ってしまう。
「二度目はないんだよ。ミカドを買った事はあるが、一回だけだ。もう忘れてしまった。
もっと聞きたいか?」
涙目になって首を横に振る。
「いやらしい事を聞きたかったわけじゃないの。
この指が誰かを愛したなんて考えたくない。」
「さて、どうしたら、このお姫様は満足してくれるのかな?」
優しく抱き寄せて、いつもと同じようにくちづけする。唇を離して顔を見つめる。正面から礼於を見つめる。その瞼にキス。
「ああ、なんて言えばいいんだ。
言葉に出来ないよ。」
顔から首に、肩になぞっていく。顎を持ってまた口づけ。肩にもたれた礼於に傑が囁く。
「ずっと一緒にいてくれるかい?」
「うん。」
「私が一緒にいたい、と思ったのは礼於だけなんだ。愛してる。」
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