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第103話 闇を仕切る

 藤尾がベンツを乗り付けた玄関前に、組の留守番がズラリと並んだ。みんな身体に派手な絵が描いてあるのが見え隠れ。気弱な人間は絶対、近寄りたくない場所だ。 「ご苦労さんです。」 直立不動、ドスの効いた声で一斉に挨拶される。 厳重な入り口に部屋住の若いもんが控えている。 鴨居には、組の名前の入った提灯がこれまたズラリと並んでいる。一昔前の破門状が壁に所狭しと貼り付けてある。破門になると、こうして全国に状が回る。今時だが、伝統なのだ。メールじゃダメらしい。  桜会はある意味、昔ながらの伝統的な侠客を踏襲している。藤尾はここに来ると何故か懐かしさを覚える。極道らしい極道だ。  藤尾は極道ではない。その上の、極道を統率する位置だ。  経済ヤクザやチャイマ、近頃では筋の通らない半グレなどがのさばって来た。仁義もわきまえない素人さんが我が物顔で悪事を働く。  それらを統率する。警察さえも、藤尾さん傘下の下部組織でしかない。  日本は法治国家だから、警察という組織の存在理由がある。それらを把握し,使いこなすのが藤尾さんの仕事だ。もちろん一人でやっている訳ではない。全てに顔が効くのは、奥の老人の力で、ある。勘違いしてはいけない。奥の老人たちは、何でもできるスーパーマンではない。超能力者でもない。ただ、この国の、権力を統べている。  こういう場所に出ると、藤尾の貫禄がひときわ、精彩を放つ。 (集さん、惚れ惚れする。素敵だ。 こんな強面の集さんを、俺はこの手に抱けるんだ。集さん愛してます。) イケメンだが、強面なら引けを取らない名都だが、藤尾にはメロメロだ。

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